大規模修繕工事が出来ない!?修繕積立金が不足する理由と理事会がすべきこと
道を歩いていると、マンションに黒いシートと足場がかかっている現場を見たことがある人は多いと思います。そう、それが大規模修繕工事です。
マンション竣工後、12~15年を目安に行なう外壁部分や鉄部の全面的な補修工事のことを言います。そしてこれはマンションの購入者が一度は頭を悩ませる種でもあるのです。
「修繕積立金が足りない。。。」
このような問題に直面したマンション居住者の方は多いでしょう。
マンション購入者である管理組合員は毎月修繕積立金を支払うこととなっており、これを文字通り積み立てていくことで将来的に発生する工事費用を捻出しているのです。
本来は新築分譲時において、将来的な工事費用を見越して設定されているはずなのに、なぜ足りなくなってしまうのでしょうか?
大規模修繕で修繕金が不足する主な3つの要因
1.修繕積立金を安く設定することで、購入時の初期費用を下げている
最初の修繕積立金はマンションデベロッパーが設定することになります。これが余りに高額では購入後のラニンニング費用が高額となってしまいます。
昨今ではマンション乱立の時代となり競争も激化しているなか、少しでも購買意欲に刺さるよう適正以上に修繕積立金を安く設定しているデベロッパーが多いのです。
2.設備維持費が高額
マンションを維持するためにはエレベーターや機械式駐車場、給排水ポンプ等様々な機械設備があります。
これらは維持するため、定期的なパーツ交換や機器更新も発生します。パーツ交換も5年毎、7年毎、10年毎の周期が多く、特に2回目の大規模修繕工事前の段階で多くの費用を支出することとなってしまうのです。
3.大規模修繕工事費が必要以上に高額
大規模修繕工事を発注する際には、
- 管理会社への直接発注
- 施工会社へ直接発注
- コンサルタント会社経由にて施工会社へ発注
の主に3種類がありますが、費用を精査しないと高額な見積書の提出を見舞う可能性があります。
管理組合側には建設業界に詳しい方の方が少ないでしょう。任せきりな発注では高額な見積書を提出してくることが実際にあるのです。
修繕積立金がなくなるタイミングはいつか
では実際に修繕積立金が不足するタイミングはいつなのか?
首が回らなくなってしまう前に、いつがなくなり得るタイミングを知っておく必要があります。
マンションの経年数によってそのタイミングは変わるため、築浅マンションと築古マンション、この2つに分けてご説明します。
築浅マンションの場合(1~12年目)
多くのマンションでは第1回大規模修繕工事にて修繕積立金が足りないケースはほとんどないと思います。
一般的にマンションデベロッパーは第1回大規模修繕工事に足りるギリギリのラインに修繕積立金の額を設定していることが多いからです。
もし足りなくなるとすると7~10年目の設備修繕です。
理由としては、機械設備の部品交換周期が上記の経年数に集中しているためです。
一般的な機械設備の中で修繕が必要な機器としては給排水ポンプ、機械式駐車場、オートドア等が挙げられます。
これらのモーターやエンジン部分、歯車といった稼働率の高い部品は、メーカー推奨の交換周期が5~7年、7年~10年の2パターンが多いです。
メーカーの部品交換推奨は予防保全の意味合いが大きいため、かなり前乗りで交換を求めてきます。メーカーの推奨通りにメンテナンスすることは悪いことではありません。
しかし、必要以上に早期の部品交換等のメンテナンスする事は修繕積立金の無駄使いに繋がりってしまいます。
そして、最も重要な大規模修繕工事の際に修繕積立金が足りない状況にも繋がってしまうのです。
築古マンションの場合(12年目以降)
1回目の大規模修繕が無事終わった。一息つきたいところではありますが、大規模修繕工事直後が要注意です。
マンションの経年劣化が進行すると当然に修繕箇所も増えます。
つまり、第1回大規模修繕工事よりも第2回の大規模修繕工事は工事項目も工事金額も増加することとなります。
しかも、エレベーターや機械式駐車場などの設備の耐用年数が20年程度のため、設備そのものの交換する大掛かりな工事も発生します。
大規模修繕工事が無事終了したあとに、手元の修繕積立金の残額と毎月の積立金と今後の収入をきちんと把握しておかなければ、次回の大規模修繕工事はだけでなく、ライフラインやセキュリティに繋がるマンションの機械設備の修繕すら出来ない懐事情となってしまう可能性もあるのです。
最も支出の大きな大規模修繕工事が終わった直後こそ、管理組合の意識も高いでしょう。そんな時にこそしっかりと今後の計画を立てていく必要があるのです。
修繕積立金を値上げしないためにできること
最後に、修繕積立金を値上げしないためにできることについてご紹介します。
誰しもが出来ることなら修繕積立金の値上げは避けたいはずです。
そのためには、管理組合として支払う費用を削減し、必要以上の支出が無いよう節約することが必要です。
節約するためには住民や管理組合の代表機関である理事会の協力が必要です。
日常的な管理の中ですべきこと
不要な工事の支出を抑えることが節約に繋がります。「修繕積立金がなくなるタイミングはいつか」でもご紹介しましたが、メーカーは自社部品を原因とした事故を嫌がるため、非常に前のめりで部品の交換工事を勧めてきます。
これが果たして現時点で必須の工事なのかをしっかりと精査し、必要以上の工事は後ろ倒しにすることが必要です。
もちろん、節約をばかりに気を取られ安全面が欠如してはならないため、日々の点検報告書に目を通し、機器の稼働状況に問題がないか常にチェックをしておくことも重要です。
大規模修繕工事ですべきこと
施工会社1社の独占状態とならない様、数社での競争状態とし、適切な仕様と金額を提示する業者に発注することが大切です。
しかし実情は管理会社任せになっており、管理会社の独占状態となることが多いです。
この競争状態のない環境下では適正かどうかの判断も付かないまま、高額な支払をしてしまうことになります。
一方で、この精査をプロに頼もうとコンサルタント会社へ依頼する手段も一般化していますが、昨今の報道で施工会社と予め癒着し、金額の精査をしない悪質なコンサルタント会社も横行しています。
いずれにせよ、コンサルであれ管理会社であれ、他社に全てを任せっきりにすることでグレー部分が生まれ余計な費用が発生してしまうのです。
管理組合が主体性を持ち、行動していくことで大規模修繕の工事費用を抑え、修繕積立金を将来に残すことができるのです。