大規模修繕を管理会社に任せてもいいのか?そのメリット・デメリット
どのマンションにとっても必要不可欠であり、避けて通れないのが大規模修繕工事です。この大規模修繕は時間も費用も掛かり「管理組合にとって最も大きな仕事」と言っても過言ではありません。
その大規模修繕を管理会社に任せても良いものなのか、メリット・デメリットから考えてみます。
大規模修繕を管理会社に任せるメリット
大規模修繕を管理会社に一任できる
管理会社に大規模修繕を任せることでのメリットは、何事も「一任できる」ことが最大のメリットです。
大規模修繕の計画策定から施工完了、アフターメンテナンスに至るまで、作業工程は実に膨大であり、専門的な知識も必要となり、かかる時間も莫大なものになります。
理事会にしても、修繕委員会にしても、何かしらの役割を果たしていくことになりますが、管理会社に任せることで、断然果たす役割は減ります。
管理会社には、常日頃からお金を払って管理をお願いしている立場でもあり、わがままも言いやすく、何より管理会社にも利益が生じるので、修繕工事だけでなく、マンション管理のやる気も変わってくるでしょう。
修繕積立金が潤沢で、日頃から管理会社のフロントマンと信頼関係が構築されていて、理事会・修繕委員会も含め様々な手間を省きたいのなら任せても良いと思います。
責任の所在の明確化と窓口の一本化
管理会社に大規模修繕を一任するもう一つのメリットとして、「工事完了後のアフターメンテナンス」が挙げられます。
タイル補修工事を行ったにもかかわらず、工事が適切に行われていなかった為に風雨の際、タイルの浮き部分から雨水が入居者の部屋に浸水してきた
例えばそんな事態があった時、管理会社に一任している場合の方が対応はスムーズでしょう。
管理会社一任の工事でなければ、入居者との連絡も個人情報が絡んできますので、何かと確認が必要になります。施工会社が下請け会社にタイル工事を任せていたとしたら、理事の手間も掛かり、解決までに時間を要することと思います。
管理会社に一任することで、窓口が一本化でき、責任の行方を特定しやすくなるのです。
管理会社が大規模修繕を一任されていたとすれば、大規模修繕で発生する問題は管理会社が責任を果たす必要があり、対応も迅速となります。
管理会社が施工に関わってなければ、責任の行方もはっきりしない可能性も出てきますし、トラブルになる可能性も高くなります。
大規模修繕を管理会社に任せるデメリット
大規模修繕の費用が高くなる
まず何より管理組合が懸念すべきは工事の費用面です。
管理会社は、管理組合の予算も作成すれば年度中のお金の動きも常に把握しております。つまり、管理組合の懐状況が手に取るようにわかるわけです。
これは何を意味するかといいますと『現状の財政状況に応じた見積もり作成ができてしまう』という事です。
仮に修繕積立金が潤沢にあるとしましょう。工事業者を3社くらい選定したとしても、全てが管理会社と付き合いのある会社だとすれば、談合も可能ですし、何より住民の皆様にはわからない部分での水増しもできますし、管理会社へ工事会社から紹介料という名目でお金を流すことだって自由に出来てしまいます。
いかに理事会・修繕委員会が目を光らせていても管理会社に全てを任せてしまうと、競争原理が働かなくなり、一般的な価格とは掛け離れることとなり、金銭面での弊害は甚大となるでしょう。
当然のことですが、管理会社も利益を追求する法人ですから、利益目標もあれば、フロントマンに対するノルマがあるのが普通です。
フロントマンも会社の概要については世間話しで話すかもしれませんが、細部にわたる、特に自らの個人的なノルマや会社の懐事情等を話すことはないと思います。
なお大規模修繕に限らず、管理会社では管理しているマンション毎に、固定の管理費以外にスポットで発生する工事や点検、清掃等の予算組みをしてます。
管理会社によっては、これを数年分作成し、年度毎にマンションから発生する利益とそれに対するノルマを設定していることがあります。
そのような管理会社にとって大規模修繕は「利益の泉」であり、長年マンションを管理したことに対する「ボーナス」的な捉え方をしている可能性があります。
ただし、このような管理会社ばかりではないことも付け加えておきます。
馴れ合いの工事になる可能性がある
大規模修繕を管理会社に任せるもう一つのデメリットは大規模修繕が馴れ合いの工事になる可能性があることです。
管理会社は施工会社を選ぶ際に自分たちが出来るだけ操作しやすい会社を選ぶわけですから、施工会社がミスを犯したときも、管理会社も何かあった際に施工会社を盾に上手に逃げることも想定されます。
加えてチェック体制も曖昧になりがちで、施工会社も管理会社も自分たちの都合が良いように確認作業を行いがちになりますし、まずい部分が住民の皆様に知らされずに工事完了日を迎える危険性がないとは言えません。
管理会社・施工会社ともに利益を追求するわけですから、あってはいけないのですが、手抜き工事が発生しないとは言い切れません。
実際に2015年末には最大手である三井不動産の物件でデータ改竄があったのは記憶に新しい話です。
手抜き工事は極端な例ですが、大規模修繕の管理会社一任は、「確認作業の低下」や「報告すべき事項の漏れ」などを生じさせる馴れ合い工事になる可能性があります。
管理会社に大規模修繕を任せることのまとめ
普段から組合と管理会社の間で信頼が構築されていれば、管理会社に任せるのも一つの手でしょう。
実際に、『費用がかかっていても管理会社に任せる方が安心だ』そうおっしゃる理事の方もいらっしゃいます。
しかし、大規模修繕のコストを下げたい、管理会社に任せきりにはできない、そう思うのであれば、みずから工事を発注する方法をおすすめします。