マンションの大規模修繕!総会で注意すべきポイントとは?
マンション管理組合の年度末は12月末である事が多く、1月の新会計年度に入ってから数か月以内に管理組合総会の招集が行われます。
おおむね2,3ヶ月以内とされているマンションが多いですが、総会が招集され、議案に対する決議がなされます。
その中でも一般的なのが、大規模修繕工事に関する総会決議です。大規模修繕工事に関する総会決議はどのような形で行われていくのでしょうか。今回はその点について見ていきます。
管理組合総会の前に実施すべきこと
大規模修繕工事の決議が行われる管理組合総会(以下、総会)において、工事内容等を決議する前に、工事内容等何を実施していくべきなのかの検討を重ねながら、総会に向けて準備をしていかなければなりません。
一般的には、修繕委員会で検討したものを、理事会に上申し、承認ののち、更に総会に上申する流れになると想定されます。
修繕委員会で事前に審議する
大規模修繕工事を行うに当たり、理事会の分科会的な存在である修繕委員会を組成する管理組合も多くなっています。
理事会における理事の負担を避けることや、分科会で十分に審議をする場を設けて準備をする必要があるぐらい、詰めるべき箇所が多い点も挙げられます。
そのような大規模修繕委員会で、設計監理を担当する会社や管理会社とともに、施工会社各社から提出された大規模修繕の見積を検討したり、工事内容を吟味する必要があります。
大切なのは、設計監理を行う会社からの助言を貰うものの、修繕委員会自ら検討して、行うべき修繕工事を考えていくことです。
一つ一つの工事内容がどういうものであるかの詳しい内容は理解する必要は必ずしもないですが、普段生活している中で劣化状況を確認しながら工事内容が適切かを考えていくことも必要になります。
従って、他の議論が必要な理事会では到底裁ききれない量になってくるため、分科会としての修繕委員会が有効に機能してくると言えます。
修繕委員会として、理事会に上申すべき大規模修繕工事案をまずは検討します。修繕委員の中に兼任理事がいると修繕委員会と理事会の連携が取れ、よりスムーズに行くと考えられます。
理事会での決議
修繕委員会で修繕工事内容が吟味された後に、総会に上申すべき内容について理事会で決議を行います。
理事会としては、これまで積み立てた修繕積立金に対して予算内に入る工事費用になっているか、工事内容全体として適切なものになっているか、また理事会で議論している日々の修繕内容と工事が重複していないかなど、チェックしていく必要があります。
日々の修繕委員会と理事会が連携していれば、修繕委員会の審議内容も理事会で理解しやすく、最終的な工事内容の決議になった際にも大枠を理解しているため、スムーズに可否判断もしやすいと考えられます。
総会での決議
大規模修繕工事に入る前に、必ず総会での決議が必要になります。
総会の決議は、工事開始時期によっては、タイミング的に定時総会には間に合わないため、臨時総会を活用することも考えられます。
具体的な決議内容について、確認したいと思います。
大規模修繕工事実施の決議
大規模修繕工事をいつ、どのような内容で、いくらの費用を掛けて実施するかの決議を行います。
区分所有者にとってはマンションの未来を決める、大切な工事のための決議になります。
関心が高いマンションであるほど、様々な意見や質問が出る事も想定されます。
そのような場合に備えて、後述する工事説明会において疑問点を事前に解消しておき、区分所有者との合意を形成しておくことも非常に有効な手段です。
さらに前年度の総会開催時点において、修繕委員会が既に組成され大規模修繕工事を翌年実施することを計画している場合、前年度の総会で進捗状況を報告し、当年度の総会で決議すると、より区分所有者の理解度も深まり、合意形成もしやすいと考えられます。
借入が必要な場合の決議
国土交通省が定める標準管理規約によれば、修繕積立金を使用して実施する工事についてのみ、借入金を充当することができるとされています。
借入金を普段の管理費に充当することは、管理組合の自転車操業化を助長することから出来ませんが、長期的な効果がある修繕工事のためには充当することができます。
もし借入をする場合は、大規模修繕工事に充当する場合において、同時に総会で決議を取る必要があります。
普通決議か特別決議かの違い
総会には普通決議と特別決議がありますが、標準管理規約における、大規模修繕工事に掛かる決議の違いについては以下の通りです。
大規模修繕工事がどちらに該当するかを確認の上、決議に掛ける必要があります。
項目 | 普通決議 | 特別決議 |
---|---|---|
決議要件 | 出席した区分所有者の議決権の過半数の賛成 | 区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成。ただし、区分所有者数は過半数まで減ずることができる。 |
工事の内容 | 形状又は効用の著しい変更を伴わない軽微な修繕 | 形状又は効用の著しい変更を伴う修繕 |
該当すると考えられる工事の例 | ・建物の適切な維持、保全の観点から定期的に実施する必要のある計画修繕工事 ・建物の基本的構造部分の加工の度合いが小さい、柱や梁への炭素繊維シートや鉄板を巻き付け等の耐震補強工事 ・建物の基本的構造部分(壁・柱・スラブ等)の取り壊しを伴わない階段へのスロープ・手すりの設置 ・防犯カメラ・防犯灯の設置、窓ガラス・玄関扉等の一斉交換工事 ・既存のパイプスペースや空き管路を活用した、光ファイバー・ケーブルの敷設やオートロック設備の配線工事 ・既に不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事 等 | ・既存住棟への集会所・倉庫、エレベーター等の共用部分の増築等により、既存建物の外観形状を大きく変化させる工事 ・戸境壁やスラブの開口、既存階段室のエレベーターへの改造など、建物の基本構造部を大規模にわたって加工する工事 ・集会所等の既存の附属施設の建替え、増築、大規模な改造工事 ・敷地内の広場・公園を廃止し駐車場や駐輪場に変更するなど、敷地表面の利用を大きく変化させる工事 等 |
※国土交通省のマニュアルは区分所有法上の決議の記載ですが、一般的な運用上、標準管理規約の決議に合わせて記載しています。
なお、借入金を普通決議による工事に充当する場合は普通決議にて、特別決議による工事に充当する場合は特別決議にて、借入金の総会決議を行うことが望ましいでしょう。
総会決議事項以外で検討すべきこと
総会決議において、大規模修繕工事議案が無事可決されるためには、下準備も必要になってきます。
決議事項では無いものの、検討しておいた方が良い点を紹介します。
工事説明会の実施
大規模修繕工事を行うにあたっては、どこを工事するのか、工事期間はどれぐらいなのか、工事中に注意すべき点など、施工業者からの工事説明会が有効です。
工事期間中においては、外壁塗装を行うことで洗濯物などをケアしなければならなかったり、ベランダの片付けが必要であったり、工事中である場合は回り道をしなければならないなども発生します。
また、足場が組まれることから、防犯上の課題も発生するため、予め施工業者から説明を受けて対策をしておく必要があります。
長期修繕計画の準備
工事とは直接関係は無いですが、工事の前後において、次回以降の工事に向けて長期修繕計画の見直しを行っておくことが大切です。
また、国土交通省の推奨として、計画開始から30年以上のものであり、2回以上の大規模修繕工事が含まれるものが望まれます。
これらは、大規模修繕工事を計画している段階において、今後の長期修繕計画も一緒に作成することで、今回の工事内容との整合性が取れるとともに、同じ工事担当の設計監理者に依頼することでコスト削減にも繋がるかもしれません。
次回の大規模修繕工事の間までに必要な工事の明確化
当該長期修繕計画が作成されると、大規模修繕工事の間に、工事サイクルに合わない修繕工事が発生します。今回の工事にも含まれないものもあるかもしれません。
その工事内容を明確化することにより、大幅な劣化や手遅れになることも防ぐことが出来るので、忘れずに明確化しておくことが大切です。
まとめ
大規模修繕工事を行うためには、必ずその前に管理組合総会において決議をしておかなければならず、また決議前に準備すべき事も多々発生します。
管理組合として前もって準備することで、抜け漏れの発生も防ぐことが出来ます。
工事内容や事前準備も、管理会社任せにするのではなく、修繕委員会や理事会においても主体的に確認していくことをお勧めします。