修繕積立金を値上げする前に!管理組合として出来ること
マンションにおける修繕積立金、大切な資産であるマンションを維持していくために必要なお金であると分かってはいるものの、出来るだけ安い方が良いというのは誰もが思うことではないでしょうか。
もちろん必要な金額よりも不足してしまうと、大規模修繕で一時金が発生したり、十分な工事が出来ず資産価値の低下に繋がったりしてしまいますので、安ければ良いというわけでもありません。
そんな中、多くのマンションでは修繕積立金が段階的に増額していく計画が採用されています。
では、その増額は本当に必要なのか、避けることは出来ないのか、今回は修繕積立金を値上げする前に管理組合として出来ることを解説します。
1.修繕計画の乖離を見直しましょう
当初の修繕計画では修繕積立金を5年毎に3,000円ずつ増額していく計画になっていたとします。
ですが、本当に計画されていた工事を計画通りの時期、計画通りの費用で実施したのでしょうか。
例えば、計画されていた工事について、出来るだけ費用を精査して実施したので、計画されていた予算よりも300万円安価に実施できたとします。
それは、マンション全体で300万円修繕積立金を積立てる必要が無くなったことを意味します。50戸のマンションであれば、各戸6万円、5年間で割ると月額1000円です。
このように当初計画されていた工事を実施しなくてもよくなった、計画予算よりも大幅に減額して実施できたなどのケースでは、修繕積立金の増額幅を抑えられる場合があります。
修繕積立金の増額の前には本当にその増額幅が必要なのかを確認するためにも、長期修繕計画を見直す方が良いでしょう。
2.設備の必要性を見直しましょう
長期修繕計画の考え方の基本は「現在設置されている設備を維持していくこと」です。
ですが、その設置されている設備が本当に必要な設備なのかを考えたときに、修繕積立金の増額を抑えられる場合があります。
機会式駐車場は本当に必要?
昨今の車離れ、シェアリングが普及した社会情勢によってマイカーの保有率は逓減傾向にあります。
一戸建てであれば駐車場使用料が発生しませんが、マンションでは相応の使用料が発生するため、一戸建てよりも車離れが進んでいます。
マンション竣工当初は30台分の機械式駐車設備が全て稼働していたが、現在は解約が増えて15台しか稼働していないなど、稼働率の低下に悩むマンションも少なくありません。
このようなケースの場合には、稼働していない機械式駐車場のために多額の修繕費用を投下する修繕計画になっているので、機械式駐車設備の稼働を停止させたり、機械を撤去して埋戻しをしたりすることで修繕費用が大幅に削減できる場合があります。
必要な設備どうかの確認を
長期修繕計画の対象となっている設備はどれなのか、どの設備に費用がかかっているのかを確認して、その必要性を精査するのも1つの手段です。
3.積立計画の無駄を精査してみましょう
長期修繕計画において、多くのマンションの資金計画は「無借金」で計画されています。
無借金で積立計画を作るとどうなるのでしょうか。それは資金が集中して必要になる時期に合わせて積立計画を組むことになります。
多くのマンションでは、築30~35年頃に必要資金のピークを迎えます。
なぜならば、大規模修繕の他、機械式駐車設備の更新、エレベーターの更新、給水管の更新など大きな設備の更新時期がおよそ30~35年となるからです。この時期の資金に合わせて積立金を考えると、その時期が過ぎた後に資金が余剰気味になっている可能性があります。
この資金が集中的に必要になる時期を借入金で乗り越えることで修繕積立金の増額幅を抑えられるケースもあります。
日本の社会では「借金=悪」のイメージが強くありますが、計画的な借入は大手企業などでも行われており、返済できるように計画された借入は決して悪ではありません。
どのような積立計画を採用すべきか、居住者の意見も集めながら、広い視野で判断してみてはいかがでしょうか。
4.修繕金会計と管理費会計もセットで考える
修繕積立金の増額や修繕計画の見直しを検討するときには、管理費会計とセットで考えてみましょう。
居住者としては、管理費も修繕積立金も支払う先は管理組合です。「管理費13,000円・修繕積立金7,000円」と「管理費10,000円・修繕積立金10,000円」は合計2万円になるので、居住者の金銭的な負担は変わりません。管理費の減額ができれば、修繕積立金の増額をしても増額幅を抑制したことと同義になります。
管理費会計はどう見直せばいい?
では、管理費会計の見直しはどのようにすれば良いのでしょうか。1つは管理会社の見直しです。
適切な費用で適切な業務を実施している管理会社も多くありますが、管理会社に任せているのが当たり前になっていて、管理会社への委託料の精査がなされていないケースもあります。
管理会社の変更まで考えるかはケースバイケースですが、管理委託料の相見積を取得してみのも1つの選択肢です。
この他、共用部照明のLED化による電気料の削減や共用部保険の見直しなども管理費会計の支出削減の方策として考えられます。
支出は同じだが振分けを考えて
修繕積立金会計と管理費会計を分けて考えずにどちらにいくらずつ振り分けるかというイメージで考えた方が良いでしょう。
その修繕積立金の値上げは本当に必要かどうか考えよう
修繕積立金は長期修繕計画の資金計画に基づいているため、増額することも計画の一部となっています。
そのためか、計画通りに増額していくことを当たり前と感じる方も多く居らっしゃいます。ですが、修繕積立金の増額は最終的な手段であり、その前に増額の必要性をしっかりと検証するべきです。
計画の中に無駄は無いのか、管理費側に余裕は無いのか、あらゆる面を検証が先にあり、「増額」という居住者の負担は最後になります。
修繕積立金の増額は、居住者の家計にも影響を及ぼしますし、購入を検討する方が感じるランニングコストにも影響を及ぼします。「このマンションはランニングコストが高いから別のマンションの購入を検討しよう」を判断されてしまうと、マンションの資産価値に影響を及ぼしているということです。
修繕積立金が不足してしまっては元も子もありませんが、まずはその増額が本当に必要なのか、立ち止まってしっかりと考えてみてはいかがでしょうか。