大規模修繕の定義と目的
管理組合にとって最も大きな仕事はマンションの大規模修繕です。
大規模修繕とは長期修繕計画に基づいて行われる「計画修繕」の中でも、建物全体に行う修繕工事を大規模修繕といいます。
工事の計画から実施時期まで長い時間をかけて行い、毎月各住戸から徴収し積み立てている修繕積立金で、ときには億単位の費用をかけて実施する、それが大規模修繕です。
大規模修繕の定義
国土交通省は大規模修繕を以下のように定義しています。
大規模修繕とはマンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期にわたるものをいう
国都交通省 マンションの改修・建替え等について
具体的な特定の工事を大規模修繕というわけではありません。工事の期間と金額、マンションに対する工事範囲が大きいものを大規模修繕といいます。
大規模修繕の目的
前述の大規模修繕の定義にもあるように、快適な住環境と資産価値を維持するために行うものが大規模修繕です。そして、マンションの修繕には修繕、改良、改修の3つの考え方が定義されています。
修繕の定義
廊下の鉄部が錆びる、屋上の防水が耐用年数を過ぎるなど、マンションの劣化は避けることができません。
そのような部品や設備の劣化に対して、修理や取り替えを行って、実務上問題がない程度までに初期性能を取り戻すために行う工事です。
修繕を怠ると、例えば鉄部がサビにより爆裂する、屋上や外壁のひび割れから漏水が発生する、など問題が起こります。
こういった日常生活に問題が起きないようにするための工事を「修繕」と言います。
改良の定義
建物の性能や機能をグレードアップして、当初の性能以上のものにすることと定義されます。
例えば、エントランスを自動ドアにする、郵便受けに宅配ボックスを設置するなど、が改良にあたります。
こちらはマンションの資産価値の向上が主たる目的です。
改修の定義
前述した修繕と改良を同時に行うこと改修といいます。例えば、
「屋上の防水や外壁の塗装工事だけでなく、住民の高齢化に伴いエントランスをバリアフリーにする」
このような工事を改修と定義します。
修繕・改良・改修の概念図
マンションの設備は経年劣化をしていきますし、分譲時には最先端であった設備も時代と共に陳腐化してしまいます。
このように修繕と改良を組み合わせて大規模修繕を実施していくことが重要であると国土交通省は明記しています。
大規模修繕の工事範囲と必要な決議の関係
大規模修繕に必要な決議はその工事内容・範囲によって変わります。
共有部分に対して著しい変更をともなわないものは「普通決議」です。
外壁の補修や屋上防水などは過半数の承認が必要である普通決議で承認することができます。
反対に共有部分に対して形状の変化を伴うものは「特別決議」です。
設備の増築・改築、例えば駐車場を駐輪場へ変更するなどは、4分3以上の賛成が必要な特別決議が必要です。
つまり修繕であれば「普通決議」、改良・改修の場合は「特別決議」が必要になる可能性があるということです。
参考リンク:
大規模修繕の資金問題
大規模修繕は劣化を直すだけの修繕ではなく、設備をグレードアップさせる改良を行うことが理想です。
しかし、多くのマンションでは修繕積立金ガイドラインで算出されている修繕積立金の適正価格よりも少ない金額しか徴収していません。また長期修繕計画でも修繕までは計画にされていますが、改良や改修は一般的には組み込まれていません。
そのために、いざ大規模修繕を行おうと思っても、修繕積立金が足りない、という事態が発生するのです。
大規模修繕で資金不足に陥らないために
大規模修繕で資金不足にならないためにすべきことは2つです。
1つは「適正価格の修繕積立金をしっかりと積み立てていくこと」。もう1つは「大規模修繕の工事を任せきりにしないこと」です。
適正価格の修繕積立金をしっかりと積み立てるためには、計画通りに修繕積立金が徴収されているか、長期修繕計画を調べ、将来不足が発生しないかを確認することが大事です。また管理費の支出を減らし、余剰金を修繕積立金繰り越していくことが大事です。
支出(管理費)を抑えることができれば、貯金(修繕積立金)はそれだけ貯まります。
また工事を任せきりにしないことも大事です。管理会社・コンサルに任せきりにするのではなく、可能であれば修繕委員会を設立し、1つ1つのプロセスにしっかりと関わっていくことが大切です。
そうする事でより質の高い大規模修繕を実現することができるはずです。