マンションの管理が評価される?!知っておくべき評価基準やその制度内容
知っていますか?2022年4月の改正マンション管理適正化法の施行により、あなたの住んでいるマンション管理がSからDの五段階で評価されるようになります。
立地や築年数などの「マンション」の評価でなく、「マンション管理」が評価されます。
今回はこの改正マンション管理適正化法についてご紹介します。
なぜマンション管理が評価されるようになるのか?
マンションが建ってから年月が経過していくことで起こるマンションの老朽化を抑制し 、周辺の危害等を防止するための、維持管理の適正化に向けた取り組みが喫緊の課題となっています。
これらの背景として、分譲マンションのストック数や、マンション住民の高齢化が挙げられます。
今後のマンション市況
ストック数は現在675.3万戸に達し、推定居住人口は1,500万人超、築40年超は103.3万戸、10年後には、約2.2倍の231.9万戸、20年後には、約3.9倍の404.6万戸となる見込みです。
また、居住者の世帯主の半数以上は60歳を超え、2025年には認知症の高齢者が80万人を超えると想定されています。
こうした建物の高経年化と居住者の高齢化という「2つの高齢化」を底流として、「管理組合財政の逼迫化・窮乏化」が進行しています。
マンションの普段の管理の重要性が益々クローズアップされるとともに、適切な管理を有するマンションを認定し、インセンティブを受けることができるような制度が検討されています。
マンション管理で資産価値を高める制度
そのような中、マンション管理会社の団体である一般社団法人マンション管理業協会が中心となって、マンションの資産価値を向上させるための評価制度として、マンション管理適正評価制度が2022年4月より開始されます。
ではどのような制度なのか、具体的にその中身を見て行きたいと思います。
マンション管理適正評価制度とは
マンションの資産価値向上のための評価制度であり、定期的にマンションの管理状態をチェックし、評価対象マンション毎にその情報が開示されます。
管理が行き届いているマンションは高評価が得られ、その結果によって保険料率見直しなどのメリットが享受できる制度です。
マンション管理適正評価制度の概要
個々のマンションの管理状態や管理組合の運営状態を、評価者である管理業務主任者・マンション管理士という専門家がチェックし、S・A・B・C・Dの5段階で評価する仕組みです。
マンションの基礎的な情報や評価情報を登録の上、一定の情報を分かりやすく公開することで、いつでも閲覧することが出来るうえ、マンションの管理運営がどの段階にあるかを直感的に把握することができます。
これにより売る時の資産価値に影響するうえ、購入者側にとっては、管理が行き届いているマンションかどうかのチェックを、購入前に客観的評価を持って行うことができます。
評価項目
5つのカテゴリーから約30項目のソフト面(管理組合の状況など)や、ハード面(建物・設備の管理)の両面から数値化し、その合計点(100点満点)によりマンションの管理状態をS~Dにランク付けして評価します。
具体的な5つのカテゴリーは以下の通りです。
チェック項目 | 主な内容 |
---|---|
管理組合体制 配点20点 | ・管理者の設置 ・総会の開催、議事録の作成 ・規約の整備状況 |
組合会計収支 40点 | ・管理費会計の収支 ・修繕積立金会計の収支 ・滞納管理費等への対策 ・修繕に関する資金計画の状況 |
建築・設備 20点 | ・法定点検の実施 ・長期修繕計画書の有無 ・修繕履歴の保管 |
耐震診断 10点 | ・耐震診断の実施の有無 ・耐震診断の結果、改修計画の予定の有無 |
生活関連 10点 | ・設備等異常時の緊急対応 ・消防訓練の実施 ・防災マニュアル等の整備 |
※一般社団法人マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度」HPより抜粋
ポイントランクとして、
- Sは90~100点
- Aは70~89点
- Bは50~69点
- Cは20~49点
- Dは1~19点
- 評価無しは0点(以下)
として位置づけられます。これらの評価有効期間は1年となっています。
登録・申請方法
まず、登録や評価を受けるにあたって、申請が必要ですが、申請の前に管理組合の総会決議を経る必要があります。
総会決議を経る前に、マンションの管理状態を事前チェックしておくことが推奨されています。
そして、総会決議を経て、管理組合よりマンション管理会社へ依頼します。
依頼を受けたマンション管理会社は、管理業協会指定の講習を修了した管理業務主任者・マンション管理士がマンションの評価を行います。
評価結果を協会にて登録の上、協会HP「マンション管理適正評価サイト」に公開されます。
開始予定時期
評価制度の登録開始時期として、2022(令和4)年4月開始予定となっています。また、インセンティブ等の適用の本格稼働は、同年10月適用予定となっています。
マンションが評価される事によるメリット
マンションの管理状態が適正であるという評価が得られれば、管理組合や区分所有者、マンション管理会社などに様々な良い影響が出てきます。
具体的にはどのようなメリットが出て来るのかを見ていきたいと思います。
マンション管理の質が高まる
評価制度を導入することで、マンションの管理組合に対する高評価を得ようというモチベーションや目標が働きます。
その機運が区分所有者全体にまで広がると、マンション管理をより良くしようという意欲が高まり、マンション管理上の運営が行いやすくなります。
マンション管理の改善点がわかる
各項目ごとに点数化されることから、悪かった項目について管理上の課題が明確化されます。
そこに対する改善に取り組んでいくことで、管理の行き届いた状態を長期的に維持することができます。これは本来の高経年マンションにとってだけでなく、新築間もないマンションにとっても長期的なプランが立てやすくなり、より長い間マンション価値が保てるという好循環につながります。
マンションの資産価値が高まる
マンションの管理状態がどのような状況であるか、最新の情報を配信することで、市場からの評価も期待できます。評価の有効期間が1年なので、情報の鮮度も比較的高くなることから、この点においてもマンション価値の向上に寄与するでしょう。
これらにより、マンションの再販や転売においての価値向上も見込めます。
制度活用のデメリット
一方、デメリットも考えられます。
有効期間が1年のみ
評価有効期間が1年のため、常に最新の評価を得る必要があること、そのためには管理組合や区分所有者のより一層の管理意識の向上が必要であるという点です。
同協会からチェックリストが公開されているうえ、実績がある場合は前回の評価を参考にしながら各項目に対する継続的改善が必要になってくるでしょう。
一般公開されることによる悪影響も
毎年マンション管理の向上に取り組んでいても、S~Dに位置づけられる評価が変動することもあり得ます。前年がSだったにも関わらず、翌年はBランクになることもあり得るでしょうし、また評価者によってランクが変動することもあり得るかもしれません。
これらは一般公開されるため、ランクが下がった場合は評価が下がるため、マンションの資産価値低下も想定しておかなければなりません。
さらに評価を意識することに力が入りすぎて、管理のための費用(管理費)や、理事会及び管理組合の手間が余分に掛かってしまうことも考えられます。
高評価で得られるインセンティブ
現在検討されているインセンティブとしては、管理組合が加入する損害保険料の割引を中心に
- 情報公開に関わる保険料割引
- 維持管理状況に関わる保険料割引
- 金融面における共用部リフォーム融資の優遇
などが想定されています。
保険料は築年数が古いマンションでは問題になっています。築浅ではなく、築年数が経過しているマンションほどこの取り組み実施するでしょう。
まとめ
マンション管理適正評価制度について簡単にご紹介しました。
管理組合や理事会、そして区分所有者にとって管理を向上させていく一体感が、マンション全体で醸成させる事が出来れば最高評価であるSランクの取得も夢ではありません。
長期継続的にマンションを維持させていくためには、まずはこの評価制度を意識して管理を適正化させていくことが必要です。
管理組合、更にはマンションの資産価値向上を望んでいる区分所有者にとって非常に重要な制度と言えるでしょう。