理事長と大規模修繕委員長を経験したからこそわかった3つのこと
マンション管理会社って何をしているところでしょう?せいぜい掃除、ゴミ出し、共用部の電球交換ぐらいをしている?なんてぼんやり思っていると、管理会社から急に管理費の値上げを要求されてしまうかもしれません。
今回は、大規模修繕委員長と理事長を経験したからこそわかった、管理組合・マンションオーナーが知っておきたいマンション管理組合3つのポイントについてまとめてみました。
初めてマンション管理組合の理事になった方、大規模修繕工事を行うために修繕委員になった方の参考になれば幸いです。
1. 管理会社は管理組合の関係について
そもそも、マンション管理組合の運営は管理会社まかせではないでしょうか?
私のマンションでも、そうでした。年に一回の管理組合の総会でも毎月の理事会でも、管理会社が用意した説明資料を管理会社の担当者が読み上げて、悪くはなさそうだから、一応賛成する。
そんな感じでした。
しかし、組合の理事長と、特に、大規模修繕工事の委員長となってから、管理会社は、管理組合の味方ではないことに気づかされました。
まず、理事会の議題です。
一棟のマンションを家族構成や生活習慣がバラバラの住民が使うのですから、モラルが問われます。ゴミだしの仕方が悪い、深夜帰宅する時にうるさい、ペットの悪臭がするなどの苦情はつきないですね。
でも、こうした苦情は、話し合いを重ねることによって、住民全員が守っていこうとする決まり、ルールになっていきますから、毎回議題になるわけではありません。
管理会社の作った理事会の議案書にいつも載っているのは、決まってお金を使うことでした。
例えば、
- 活用ルールはまだ作っていませんが、防犯カメラをとりあえずつけましょう。5年リースで→月3万円
- 一本の植木が枯れそうだから、抜いて別の木にしましょう→5万円
- 民泊している人はいないのですが、一応、民泊お断りの立て札を立てましょう→20万円
こんなころを全て承認していたら、どんどん管理費は消えていきます。
防犯カメラは、つけるのが当たり前みたいな流れでつけましたが、だれも、「どんな画像になっているか?」「画像はどの期間保存されるのか?」「画像はどこに保管されるのか?」は知りません。
本当に形だけの防犯になっています。植木は、大規模修繕工事が年内に予定されているので、1本だけ新しくしても意味はないと却下、民泊もしている人がいないので、これも却下しました。
管理会社はお金を使うことばかり提案するもの
このことをさらに実感したのは、大規模修繕工事を行うことが総会で決議されて、工事をする会社、施工会社をどのように選ぶかについて、理事会で議論した時です。
管理会社は、関係会社のコンサルタントを連れてきましたが、そのコンサルティング金額は100万円(税別)で、これだけもびっくりでした。
しかし、コンサル内容が単なる助言にとどまり、専門知識を生かしてもらって、うちのマンションにぴったりの施工会社の選定まで責任をとってはくれないことで、呆れてしまいました。
選ぶ責任が組合にあることに変わりないなら、自分たちで選んでも変わりないと思いました。
管理会社は、管理組合がお金を使うと、ひょっとしたら、お金の支払先から一部返金や紹介手数料がはいるのかもしれません。
そうでなくても、管理会社内で提案実績としてカウントしているのかもしれません。そんなメリットはなくても、管理費用を使いすぎて足りなくなったら、管理組合に「管理費をもっとください」と言えば済みますから、なんの痛みもありません。
しかし、管理組合は、お金を使いすぎたツケは、免れることはできません。管理組合員の誰だって、管理費費用は抑えたいと思うものです。お金を使うことばかり提案する管理会社は、管理組合の味方とは、言えません。
2. 組合員の全員一致はありえない
大規模修繕工事の施工会社は、理事会の承認を経て、最終的には組合の総会で承認決議がされました。
その承認決議の約半年前に、
「工事の施工会社の候補をご紹介・ご推薦ください!」と組合員の全員にむけて、管理組合の掲示板に掲示したものの、結局候補の推薦も紹介は1社もありませんでした。
そこで修繕委員会で候補を探し、管理会社から一部の紹介のあった候補の会社と合わせて、現地調査をしてもらってから、見積もりを取りました。
そして、修繕委員会と理事会とで、集まった候補の会社をスクリーニングし、説明会を行ってもらい、最終候補1社に絞りました。
ここまでの一連の修繕委員会と理事会の活動は、逐一、管理組合の掲示板に掲示して全組合員に報告していました。
また、組合員の積極的な関与を歓迎していたので、組合員の推薦と紹介は、最終2社の候補に絞るまで、期間を延長して受け付けていました。それでも、1社の紹介もありませんでした。
これが無関心なのか、反対なのかは、組合総会の決議までわかりません。
総会の出席率が50%を超えない状況ですが、委任状や議決権行使書を合わせて、97%の賛成多数で大規模修繕工事の施工会社が承認されましたが、反対票もありました。「何をしたら賛成をいただけたのか?」は、わかりません。
しかし、大規模修繕工事のような数千万円もかかる大きな議案なら、全員一致はほぼありえません。そのような心構えを持っておくと運営を気負わずに行うことができます。
それも理由なのか、マンションを取り壊して、新しい建物を建てる建替え決議でさえ、全組合員の賛成ではなく、80%の賛成があればできるように法律で定められています。
3. マンション管理の知識は役に経つ
組合の理事長としては、全組合員のだれもが満足できるような組合の運営をしたいと思いますが、そうはいかないのが実情です。
毎月1回の理事会でも、組合員なら誰でも出席できるようにすると、ひとこと言いたい人ばかりが集まってしまい、理事会の時間を延長したのに、何も決まらなかったこともありました。
また過去の解決済みのことまで言い出したりする事態となり、議論が脱線し、そもそも何を話し合っていたのかがわからなくなってしまい、収拾がつかなくなってしまうこともありませした。
管理会社のお金の使いみちの提案も、なぜそのような提案をするのかを知っておかないと、ただただ断るわけにもいかないものです。
こんなことから、マンション管理組合の理事になった方、大規模修繕工事を行うために修繕委員には、マンション管理についての知識を身につけることをおすすめします。
マンションの管理業務主任者やマンション管理士の資格がありますが、資格試験を受験しなくても、そのテキストを読むだけでも良いと思います。
そうすると、「なんで大規模修繕工事するの?」といった素朴な疑問にも答えることができます。
また、理事会や修繕委員会の議事運営が迷走しても、理事会で何を話し合うべきか?修繕委員会ではなにをすべきかが念頭にあれば、出席者の発言を制限することや、別の話題に方向づける発言が自然にできるようになります。
マンションは大切な自分たちの資産
どうしてもマンション管理は人ごとになってしまいます。けれどそれをどれだけ自分こととして捉えることが出来るか?それによってマンションの管理も大規模修繕の費用も大きく変わってくるのだと思います。