費用

マンションの大規模修繕に必要な費用の目安と相場

建物は竣工した時点から劣化が始まります。それはどの建物であっても避けらないことです。

お住まいのマンションを劣化から守り、快適な住環境を維持するために行う工事を『大規模修繕工事』と呼びます。

大規模修繕工事は、定期的に建物診断の実施を行い、診断結果に基づいて作成された修繕計画に基づき行われます。

大規模修繕工事は外壁の修繕や屋上防水の修繕等を中心に2~3ヶ月(50戸以上のマンションだと4~6ヶ月かかる場合もあります)の時間をかけて行われます。

分譲マンションの寿命は50年~60年と言われる中、大規模修繕工事は、「元の状態に戻す」だけでなく、「建物の資産価値向上」のための工事でもあります。

では、大規模修繕の工事費用はどのくらい掛かるのでしょうか?そして費用が足りない場合にはどのような対応をすべきでしょうか?

大規模修繕の費用の目安と相場、そして足りない場合にすべきことをご紹介していきます。

大規模修繕工事の費用の目安について

大規模修繕工事の費用の目安でよく言われるのは戸あたり100万ですが、概ね『75万円~125万円』と幅をもたせて考えておくといいでしょう。なお100万のこの範囲の中央値です。

仮に40戸で8階建であれば、3,000万円~5,000万円の費用が大規模修繕の工事費の目安ということになります。

もちろん、どのような工事内容によって金額は変わりますが、大規模修繕にはこのくらいの金額が必要である、と捉えておくとよいでしょう。

大規模修繕工事の費用の相場について

目安と相場の意味合いはほぼ同じかも知れませんが、国土交通省によるマンション大規模修繕工事に関する実態調査にて、「大規模修繕工事費総額」「戸あたり大規模修繕工事費用」が報告されています。

「大規模修繕工事費総額」

大規模修繕の工事費用のグラフ
国土交通省:大規模修繕工事と工事金額の関係

このデータからは、大規模修繕でどのくらいの費用が掛かったのかしかわかりません。

そのためマンションの規模に当てはめて考えることができませんが、大規模修繕の工事費用は90.1%のマンションで2000万を超えています。63.1%のマンションで4000万を超えています。

どのような工事が大規模修繕かが定義されているわけではないため詳細は分かりませんが、1000万以下の工事であったマンションは、戸数も小さく工事を限定したのだと推測されます。

工事費用が5億円を超えるマンションも2.6%存在しますが、比較的大規模なタワーマンションや、複合用途型マンションが想定されます。

2000年代からのマンションのタワー化の進行とともに、順次大規模修繕工事の時期を迎えることから、今後は数億円規模の大規模修繕工事が増えて来るでしょう。

「戸あたり大規模修繕工事費用」

戸あたりの大規模修繕費
国土交通省:戸あたり大規模修繕にかかった費用

こちらのデータは、戸あたりいくらの大規模修繕工事費用が掛かったのかの統計です。

この統計と見てみると、どの規模のマンションにおいても、戸あたりの工事費は50万以上から125万未満に約7割のマンションは収まっています。

1回の大規模修繕で200万以上掛かっているという回答もあれば、戸あたり25万未満の工事費で大規模修繕を行っているという回答もあります。

総工事費という観点では、仮に大規模修繕の戸あたり工事費が90万だった場合、20戸マンションであれば、1,800万円、200戸のマンションであれば1億8,000万となり、工事費にはかなり開きがあります。

この調査では「大規模修繕工事」の考え方として、耐震改修工事を除く計画修繕やグレードアップのための改修工事を指していますが、各マンションでの工事内容はバラバラです。

そのため、これらの統計データからわかるのは他のマンションでの大規模修繕工事費の結果であり、自分たちのマンションにとっていくらが適正なのかが分かる内容でありませんのでご注意ください。

これは1つの参考資料として、大規模修繕をする際は自分たちのマンションにあった工事をしていくことが重要です。

大規模修繕の費用算出のために

では自分たちのマンションにあった大規模修繕工事をするためにすべきことについて説明していきます。

まずは建物診断を行う

建物診断は管理会社に業者選定を任せるのではなく、ぜひ理事会・修繕委員会を中心に業者選定を行ってください。大変な面もあるかも知れませんが、工事費の適正化には重要なことです。

診断方法としては、

  • サーモグラフィーを使用した外壁の劣化診断
  • コンクリートの劣化診断のための中性化試験
  • ファイバースコープによる給排水管の劣化状況把握
  • 棒を使用しての外壁タイル劣化診断、等

このような形で機械とアナログ(目視作業を含む)を合わせて行っていきます。

建物診断結果の評価方法

診断結果の出し方としては、5段階による評価をします。

例えばA・B・C・D・Eで、

A:状態良好(5年以上は修繕の必要なし)
B:状態良好であるが、5年以内での改修の必要あり
C:経年通り劣化している、3年以内で改修の必要あり
D:やや劣化している、1~2年以内に改修する必要あり
E:劣化している、今すぐ改修する必要あり

という評価の仕方で結果を出して貰えば、どの箇所を修繕すべきか、計画を立てやすくなるでしょう。

次に診断結果をもとに、いよいよ大規模修繕工事の計画を立てていきます。

通常は、D・E判定を中心に工事内容を決めていくことになると思いますが、予算的に余裕がある場合、今後を見据えてB・C判定の箇所も織り交ぜて工事内容を決めると良いでしょう。

大規模修繕工事の費用が足りない場合の対応

大規模修繕工事の費用に対して、十分な修繕積立金があるとは限りません。多くのマンションは足りないことの方が多いのが実情です。

費用が足りない場合の主な選択肢は以下の6つです。

  1. 大規模修繕の工事時期を遅らせる
  2. 大規模修繕の工事内容を見直す
  3. 一時金を徴収する
  4. 銀行から借り入れを行う
  5. 補助金の活用を検討する
  6. 大規模修繕の工事費用を削減する

大規模修繕の工事時期、内容の見直しについて

大規模修繕は12年サイクルで絶対行わなければいけない、というものではありません。極端な話、評価結果が全てC以上であれば、工事は遅らせても問題はありません。

工事の内容の見直しはそのままの通りですね。改修工事だけにして、グレードアップは次期へ見送る等の判断です。

一時金、借り入れについて

3と4の方法は資金を工面する方法です。

大規模修繕はやらざるを得ない、けれどもお金が足りない、そんな場合には必要な対応です。

なお、マンションの劣化を放ったままにしておくと、結果としてその先の大規模修繕工事費がさらに上がる可能性もあります。

やらざるを得ない工事に関しては、何とかして資金を工面する必要があります。

金融機関からの借り入れは、足らない修繕費用を借り入れで賄うことにより、マンションの修繕周期を延ばすという考え方も大切です。

すなわち、借りる分は、マンションをより延命させるための価値の向上に当たる工事に充当することより、区分所有者に対する説得力も増すことになります。

足らないから借りる代わりに、次回の大規模修繕工事までの期間が借りない場合よりも長くなる、そういう訳です。

長期修繕計画を具体的に立案するとともに、修繕周期を延ばす間に修繕積立金を適切に充当することができれば、次回の大規模修繕までに適切な修繕積立金を準備することもできます。

補助金の活用について

SDGsにおけるカーボンニュートラル(脱炭素社会)を進めている事もあり、国や自治体は価値を向上させる修繕に対して、一定の補助金を出しています。

具体的には、窓ガラスや玄関ドア、外壁などの改修により快適な環境を提供する断熱改修だけではなく、子どもや高齢者にも住みやすいバリアフリー化などにおいて補助金の活用も可能です。

特に断熱改修の場合、エアコン使用の軽減から各住戸における省エネ効果が期待されるので、光熱費削減の観点でも効果を発揮します。

特別な工事でなくても通常の大規模修繕工事の中でも工事内容によっては補助金が使えるものがあるかもしれませんので、国や各自治体の情報を見てみるのがいいでしょう。

大規模修繕の工事費用を削減する

この大規模修繕費用を削減する方法についてはもう少し深く考えてみましょう。

大規模修繕の見積りは高い!

そもそもの前提として管理会社から提出される大規模修繕の見積りは高く設定されています。では、なぜ見積りは高いのでしょうか?

多くの場合、管理会社から大規模修繕の提案があり、管理会社を大規模修繕の元請けにする、もしくは管理会社から推薦された業者の中から施工会社を選んでいるはずです。

この場合、決して少なくはない額が中間マージンとして見積りに上乗せされます。この中間マージンが加わるために、見積りが高くなるのです。

管理会社に全てを任せておけば楽でしょう。理事会は提案の中から選べばいいだけです。しかし、それでは大規模修繕の工事費が割高なままとなってしまいます。

そして将来、修繕積立金が足りない、という問題が必ず発生します。

任せきりにしないこと!

この無駄な中間マージンを削減することで、大規模修繕の工事費は大きく削減できます。

大規模修繕で多いのは、理事は1~2年で交代であり次の理事への引継ぎが適切に行われない状況や、理事が大規模修繕工事の内容に詳しくない状況を利用し、管理会社が主導で進めることです。理事や理事会は任せきりにしてしまいがちです。

管理会社主導であれば、施工会社からの見積もりに少なくはない中間マージンが上乗せされていることがほとんどです。

割高になっている大規模修繕の見積りは相見積もりをとるだけで適正額となり、それだけで修繕費用は削減できます。

そのためには、管理会社に任せきりにしないことが重要です。

大規模修繕工事の費用について

大規模修繕の費用の目安と相場、工事費(見積もり)算出の手順、そして工事費が足りない場合にすべきことについてご紹介してきました。

大規模修繕工事でどのくらいの費用が掛かるかは、工事内容で変わってきますし、どの施工会社に任せるかでも変わります。

1つ言えるのはマンションは自分たちにとった大切な「資産」であるということ。そして大規模修繕の工事費はやり方一つで大きく削減できますし、マンションの資産価値向上にも大きく寄与します。

大切な修繕積立金がなくなってしまわないよう、無駄を無くし、適正額で高品質な工事を実現してください。

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参考情報

国土交通省:マンション大規模修繕工事に関する実態調査