大規模修繕でコンサルに依頼するかどうかの判断基準や考え方
大規模修繕は、マンションにおいて十数年に1回という大掛かりな修繕工事です。この重要な大規模修繕を「どの修繕業者に依頼するか」というのは大きなポイントになります。
大規模修繕を実施した後にも5年10年という期間のアフターサービス保証が付くため、安いという観点だけで大規模修繕業者を選定してしまうと、工事後すぐに倒産してしまってアフターサービスが上手くいかないという恐れもあるでしょう。
このような状況から、大規模修繕を実施する業者というのは馴染みが無いため、コンサルタント(以下、コンサル)を利用して大規模修繕を実施するマンションもあります。
とはいえ、このコンサルに依頼するにも費用がかかってしまうので、その必要性を吟味しなければなりません。
今回は、大規模修繕を安全に実施するためにコンサルに依頼するか、その判断基準や考え方を解説します。
大規模修繕のコンサル業務は大きく分けて2種類
コンサルに依頼すると言っても「何をコンサルに依頼するのか」という大前提を考えなくてはなりません。依頼する内容が多くて複雑になればなるほどコンサルの費用は高くなっていきます。
大規模修繕の場合、大きく分けると2つの段階があります。
1つは「設計業務」
設計とはどの部位をどのように修繕するのか、工事見積の項目を決めていく段階です。
例えば共用廊下の塩ビシートの貼替を工事対象とするのかしないのか、外構のフェンスは塗装するのかしないのか。マンション全体を見ながら決めていきます。
複数の業者に見積を依頼して比較検討することもできますが、各業者は自社の見積内容を推してきますので、その見積項目が本当に必要なのか、専門知識を有しながらマンション側の立場で考える人が必要になります。
設計コンサルに依頼すると、専門知識を活かして管理組合と相談しながら、見積要領を作成してもらえます。
この見積要領を基に複数の大規模修繕業者に依頼すれば、同じ工事内容の見積が提出されますので、各業者の比較検討も容易になります。
もう1つは「監理業務」
監理業務とは、見積内容通りの工事が実施されているか、管理組合の立場でチェックする作業の事を言います。
どんなに良い内容の見積であっても、その見積通りに施工されなければ、意味はありません。
管理組合の役員がチェックするにしても、専門的な塗料の種類や工法は知識が及びません。
また、管理組合の役員は自身で仕事をしている方も多く、平日日中に工事をチェックするのは難しいという場合もあります。
これをチェックするのはコンサルの仕事になります。
良い設計と良い施工ができて、初めて良い大規模修繕になります。
コンサル依頼の判断基準はマンションの規模
大規模マンションになればなるほど、修繕対象として検討しなくてはいけない範囲が広くなっていきますので、大規模マンションほど、コンサルに依頼するメリットは大きいでしょう。
大規模修繕マンションほど合意形成に苦労する
大規模マンションでは、管理組合としての合意形成を行うためにアンケートや説明を各戸から出てくる意見や要望も多くなっていきますので、それの集計・集約には時間と手間がかかります。
全ての意見や要望に応えるのは難しいため、取捨選別するためにもコンサルの見解は非常に有益です。
有識者に対するアドバイザーとしてコンサルを使う
また、大規模マンションになればなるほど知識を有した居住者がいます。
見積業者が説明をしても、それに居住者から反論が出た場合、管理組合役員では理解が難しく、対応が難しくなります。
コンサルがいれば、管理組合の立場で、見積業者と居住者の意見、どちらを採用すれば良いのか参考意見をもらえます。
修繕範囲が多岐にわたり、さまざまな意見が出やすい大規模マンションでは、コンサルを利用する方は望ましいでしょう。
小規模マンションはコンサルを利用しない検討も
一方、小規模マンションでは、意見交換などの場を設けることは大規模マンションに比べて容易です。また、アンケートを実施したとしても、意見の絶対数が少ないため、1件1件確認していくことができます。
複数の大規模修繕業者から見積を取得したとしても、差が生じている内容を把握しやすいのが小規模マンションの特徴です。
判断に迷うことがあれば、意見交換会などをエントランスで開催できますので、合意形成へ向けて検討しやすい環境です。
小規模マンションは費用とのバランスを考えて
もちろん小規模マンションでもコンサルを依頼するメリットはありますが、コンサルは費用がかかります。
費用削減の面でも、小規模コミュニティのメリットを活かしてコンサルを依頼せずに考えていくのも1つの手段です。
管理会社の関わり方について
管理組合の管理業務で一番身近な存在なのが、管理会社です。
管理員の手配や日常の清掃、フロントによる理事会・総会の支援、管理費等の会計業務など、その業務は多岐に渡ります。
日頃の付き合いもあるため、管理会社を大規模修繕の元請会社にしたり、コンサルとして監理業務を依頼したりすることも多くあります。
管理会社との日頃の関係が良好であれば、管理会社の見解や意見を居住者が尊重するため、大規模修繕においても良きアドバイザーになるでしょう。
管理会社だからこそ注意すべき点も
一方で、管理会社は会計業務を担っていることが多く、管理組合の内情を知り尽くしているという点を忘れてはいけません。
4,000万円で実施できる工事を4,500万円の予算があることを知っていれば、4,300万円として見積を提出するかもしれません。
内情を知り尽くしているからこそ公平性に欠けるというのも1つの考え方としてあります。
大きなお金が動く大規模修繕に対してどの程度管理会社が関わるのか、先ずは管理会社抜きで管理組合として話し合っても良いでしょう。
第三者が必要であればコンサルの検討を
大規模修繕をコンサルに依頼するかどうかの明確なルールはありませんが、コンサルは問題を解決する手助けをするのが役割です。
管理会社や大規模修繕業者の話を聞いてみて、自分たちで検討を進められそうであればコンサルは不要です。
大規模マンションになればなるほど合意形成の上で管理組合の立場に立った第三者の意見が必要になってきますので、コンサルへの依頼を考えていくべきです。