大規模修繕ローンを利用する上でのメリットと懸念点について
マンションを維持管理していく上で最も金額の負担が大きいもの、それは大規模修繕工事です。
この工事費用を捻出するため、組合員は毎月修繕積立金を管理組合に支払っていくのですが、昨今ではこの修繕積立金が足らず大規模修繕工事が出来ないという事態も発生しています。
しかし、大規模修繕工事はマンションを維持管理する上で必須の工事です。お金が無いからといって先延ばしにしていると、その間にも劣化は進行し様々な悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
劣化を放置することは、その分リスクも放置し事件や事故の発生可能性を引き上げることに繋がってしまうのです。
そのため、修繕積立金の少ない管理組合の救済として、修繕費用の補填を目的としたローンが展開されています。
管理組合向けのローン「マンション共用部分リフォーム融資」について
前述したとおりマンションを維持管理する上で必要な修繕工事をせず放置した場合、そこに住む住民だけでなく、外部の一般人にも被害を及ぼしてしまう可能性があります。
そういったマンションに対し救済の手を差し出す意味も含め、修繕工事の実施を目的とした管理組合向けローンがあるのです。
それが住宅金融支援機構が発行している「マンション共用部分リフォーム融資」です。
当該機構は住宅ローンの融資が中心ですが、マンション管理組合向けにも展開しています。
独立行政法人のため、民間企業と比較した場合の安心感や安定性に申し分ありません。
借入の条件について
融資金利は案件によって異なりますが0.55~0.3%で、借入には
共用部分の工事費用に充てられることと、
総会の決議によって承認されていること
が主な条件となります。※詳細は当該機構に確認して下さい
また、借入金の上限も定められており、工事費の80%または150万円(耐震改修を伴う場合は500万円) × 住宅戸数のいずれか低い額が限度となります。
これによって分かるとおり、あくまで工事を行うための融資であり、管理費の足しにするのはもってのほか、これを全面的に頼って工事を行うことも趣旨に反するのです。
あと一歩のところで困っている管理組合への支援措置的な意味合いがあると認識していただく必要があります。
大規模修繕ローンを利用するメリットについて
融資金を元手に、これ以上先送りせず修繕工事をおこなうことができることに尽きるでしょう。
前述の通り、工事を先送りすることは、先送りした期間に比例して事件や事故の危険性も増します。
修繕が必要な箇所によっては人的被害に発展する可能性も多いにあります。
何か起きてしまった後に悔いても取り返しは付かないため、多少の金利が出費となったとしても、事件事故が発生した場合の賠償費用を考えれば安価に思えるのではないでしょうか。
また、融資先が住宅金融支援機構であることもメリットとして大きいでしょう。
昨今も民間企業による不正融資が問題となりましたが、公的な団体であれば不安も少ないですし、金利も良心的な数字です。
融資を利用する上での懸念点について
一方で利用する上での懸念点についても把握しておかなければいけません。
返済が必要
まずは当然ですが借入金となるため返済が必要となります。
この返済が遅滞無く行うことが出来るかは事前にシミュレーションしなければいけません。
返済期間は1~10年間。返済期間中は修繕積立金を貯蓄できますが、その間の修繕工事も支出しなければなりません。
そこでまた「費用が足りない」なんてことになってしまうと、いよいよ首が回らなくなってしまいます。
そのため、融資を元手にした工事が終了した段階で、修繕積立金の値上げを行っておくことが必要です。
おそらく融資が必要となる状態となっているならば、
・値上げをしばらくしていなかったか、
・必要以上に修繕工事を実施してしまったか
のいずれかではないかと想像されます。
これ以上問題を広げないためにも早急に値上げを進める必要があるでしょう。
融資には総会決議が必要
また、もう一点の懸念としては、総会決議を要する案件であり、組合員の同意を得なければならないことです。
平たく言えばこれは借入金、借金です。
自身も所属する管理組合が借金をすることについて抵抗を感じる人は少なくないはずです。
他に何かやり方は無いか考える人、借金するぐらいなら一時金を徴収したほうが良いと考える人、工事費用をどうにか削減して手持ちの金額内で工事すべきと考える人もいるだろう。
反対要素や別案の出うる議案をまとめることは想像以上に難儀です。
そのため、融資を利用することは工事を実施するための最終手段と捉えてもらったほうがよいでしょう。
- 安全面を考えるとこれ以上先延ばしには出来ない
- 手元に工事のための費用は足りない
- 八方手は尽くしたが工事費をこれ以上抑えることも出来ない
- 一時金を徴収しようにも長期滞納者がいるため集金できるか不透明だ
というようなこれ以上前には進めない状態になってから、最後に頼るべき存在であるとして説明しないと、組合員としての同意を得ることは難しいでしょう。
大規模修繕で借入をする前に
修繕積立金の徴収額が甘く貯蓄額が計画に対して間に合わなかったり、最近の物価高騰や消費税増税などの支出増の影響をうけたり、財布事情の苦しい状況が重なって修繕積立金が足りない管理組合は多いです。
そのため、マンション共用部分リフォーム融資は、条件さえクリアすれば審査も緩めですし、大規模修繕によってマンションを維持管理するためにはとても頼もしい制度です。
但し、そこに頼りっぱなしも危険です。借入金である以上返済は付いて回り、借り入れという言葉そのものに拒否感のある人も多くいるはずです。
お金を工面できるという目の前の利点ばかりに目が行きですが、今一度様々な解決策や打開策と模索し、それでも足りない場合において、必要に応じた借入を行うことが重要です。