大規模修繕の決議までの流れと総会承認をスムーズに進めるためのポイント
マンションは、新築でも築浅でも一度買ってしまえば、一軒家と異なって、手入れが楽だと言われることもあります。
しかし、一軒家でもマンションであっても、建物である以上は、一年中、日光や雨や風に晒されて傷んでいくのは同じです。
しかも、マンションのほうが一軒家より大規模な建物である関係から、マンションの大規模修繕工事は、一軒家よりも遥かに高額になる傾向にあります。
そしてその高額な大規模修繕工事を実施するためには、管理組合による決議が必要です。
そこで今回は、こ大規模修繕の決議までの流れについてまとめました。
総会にて年度内の工事実施を決議する
マンション管理組合では、25年から30年程度の長期的な修繕計画しているのが一般的です。
そして、管理組合の運営は法人のように1年毎に年度が決められ、少なくとも1年に1回の定例総会が法律の定めにより必ず開催されます。
具体的な大規模修繕工事の実施は、まず、この定例総会において、その年度内で工事の実施を決議することから始まります。
この時点ではいつ工事を行うか?どの工事会社がどんな工事をするか?などの詳細は当然ながらまだ決議できません。
工事の概要だけ決めて、その工事を実施できる十分な修繕積立金の残額があることを確認します。
残高が不足する場合には、修繕積立金の追加負担や金融機関からの借入も合わせて審議される場合もあります。
理事会にて検討開始する
管理組合の総会を開催するためには、前もって議題を決めて、開催通知を出す等の様々な法的な制約に従う必要があります。
また、開催しても、出席者が少なく欠席者の委任状を集めていないと、定足数を満さないことや賛成議決に不足することが起こり、流会となり、せっかくの総会が無駄になることもあります。
そこで、管理組合の総会で大規模修繕工事を実施することが決まると、審議の場は、管理組合の理事会や修繕委員会に移されるのがごく一般的です。また、理事会は、1年か数年ごとに、理事長や理事が選任されるのが一般的です。
修繕委員会を設立する組合も多い
大規模修繕工事の施工会社が工事を計画した年度に選定されない場合には、翌年度の理事に審議が引き継がれることとなります。
すると、新しい理事への審議の過程の説明や、再審議するために余計な時間がかかり、審議の進行が遅れてしまう可能性が否定できません。
そのため、理事が替わっても審議が滞りなく進むように、理事会諮問機関として修繕委員会を設立することもあります。
その多くの場合、修繕委員会の決議を理事会に諮問しやすくなるという理由から、理事長はじめ理事が修繕委員を兼任するケースが多いです。
また、組合員自身が施工会社を選んでいるという当事者意識を高めるために、修繕委員の募集を行うことも可能です。
建築関係の仕事に就いている組合員や、建築業界の知り合いがいる組合員、建築に興味がある組合員等が、自薦、他薦を問わずに修繕委員に立候補し、修繕委員会に参加します。
大規模修繕への理解を高める配慮を
修繕委員会と理事会での検討が終われば、後は、マンション管理規約によって異なりますが、普通決議か、特別決議かの総会決議を得るだけです。
この決議をスムーズに行うためには、具体的に大規模修繕工事の実施を決議した総会の日からなるべく早いうちに、全ての組合員の大規模修繕工事への意識を高める施策をすることが望ましいでしょう。
なぜなら、マンションの管理に興味のない管理組合にとって、大規模修繕工事の意味や内容を理解していないことも多く、総会の議案で工事代金の高額な出費金額に驚いてしまい、議決に反対しかねないからです。
そこで、全住民を対象にしたアンケートを取るなどの方法で、修繕工事の必要性を認識してもらうこと方法がおすすめです。
大規模修繕工事には、マンションの建物全体に足場を掛けることによる暑苦しさや、洗濯物を干すことやエアコンの使用が制限される不便さ、また、作業員の出入りがあることで防犯上の懸念も生じます。
住民には施工会社がまだ候補の会社である段階で知っておいてもらい、信頼関係を多少でも築いておくことも重要になります。
総会での決議をスムーズに進めるために
総会を開催する前に、最終候補の工事会社には全住民を対象にした説明会を開催してもらいましょう。
この説明会が終わったら、開催手続きが煩雑な総会を流会にさせないために、総会の開催日前であっても、組合員の間では、施工会社がほぼ内定状態にしておくころが望ましいでしょう。
住民の意見が割れてしまう場合には、当事者意識の高い修繕委員が、住民の意見を徴収し、説得することが強く望まれます。
説明会で1社を内定し、総会にてその施工会社との契約を決議するという方法でもよいでしょう。
修繕委員や理事は、ごく少数の断固反対者の賛成を得ることにいたずらに注視するのではなく、効率的に決議要件を満たすように、大規模修繕工事の決議を得ることを常に念頭におくことが求められています。
なぜなら大規模修繕工事の決議が満場一致で賛成ということはないからです。
大切なことは大規模修繕工事までの道筋をしっかりとつけ、それを区分所有者である組合員と共有しながら、総会承認がスムーズに進むように段取りしていくことなのです。