長期修繕計画と修繕積立金について!未来の大規模修繕に備えよう!
マンションの大規模修繕工事には多額の費用と工事期間が必要です。
そのための修繕金は、計画的に積み立てていかなければなりません。
では将来を見越してどのように考えていけばいいのでしょうか?
今回は長期修繕計画と修繕積立金についてお伝えします。
修繕の重要性が増してきている
マンションは時間が経てば経つほど劣化していきます。それはどのマンションでも避けようがありません。
そのため、長期修繕計画をどのマンションでも作成しています。(作成していないマンションがあればすぐに作るべきでしょう)。
ここ最近では築年数が経過したマンションが増え、修繕の重要性を国としても強く強調しています。
最近新たに国土交通省から改訂された長期修繕計画作成ガイドラインにおいても、現在のマンションが向き合うべき課題に合わせた内容に修正されています。
国が掲げる最新のガイドラインを見ることで、対応すべきこと修繕について明確になってきます。
長期修繕計画の目的
マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するためには、適時適切な修繕工事を行っていく必要があります。また建物及び設備の性能向上を図る改修工事を行うことも望まれます。
そのために長期修繕計画を作成します。
この長期修繕計画に基づいて、将来見込まれる
- 修繕工事及び改修工事の内容、
- おおよその時期、
- 概算の費用等を算出
これらをもとに修繕積立金の額を設定していきます。
長期修繕計画の考え方について
長期修繕計画においては、次のように考えておくとよいでしょう。
まず、予定されている計画修繕工事は、建物及び設備の性能・機能を新築時と同等水準に維持、回復させる修繕工事を基本としています。
そのため、区分所有者の要望など必要に応じて、建物及び設備の性能を向上させる改修工事を設定する必要があり、アンケート等で住民の意見を聞きながら、改修すべき点を洗い出していく必要があります。
計画期間において、法定点検等の点検及び経常的な補修工事を適切に実施するとともに、計画修繕工事の実施の要否、内容等は、事前に調査・診断を行い、その結果に基づいて判断していきましょう。
なぜなら劣化の状況によっては、計画を立てたものをそのまま実施せずに、今後に伸ばしても有効なものもあるはずだからです。
長期修繕計画の改正とポイント
長期修繕計画の計画期間について、これまでは25年以上とされていましたが、改正により30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上の設定とされました。
新築マンションでは30年の修繕計画が設定されていることが多いですが、それと同様に既存マンションも計画の設定が望まれることとなりました。
ちなみに計画については、計画立案時からの技術革新等でマンションにより適した新たな材質や機能が開発されていることも想定されることから、5年毎に見直していくことが望ましいと言われています。
修繕積立金の考え方について
計画を立てることが出来れば、計画された工事にいくら必要なのか。そのために必要な費用を捻出するための積み立てが必要になります。
計画した工事に対して、必要な費用、つまり修繕積立金を積み立てていかなければなりません。
小修繕であればこまでの積立金で対応できかもしれません。しかし、大規模修繕の費用は多額であり、工事の実施時に一括で徴収することは不可能です。
だからこそ、一時金の設定や値上げ計画は先延ばしせずに、月々の修繕積立金をしっかり設定していく必要があります。
では、ここからは修繕積立金の適性額について考えていきましょう。
修繕積立金の額の目安について
弊社のマンション大規模修繕公募サイトのコラム、「修繕積立金」カテゴリーでも詳しくは述べていますが、来るべき大規模修繕工事に備えて、どれぐらいの修繕積立金を目標として積み立てていく必要があるのでしょうか。
国土交通省から出ている最新版のマンションの修繕積立金に関するガイドラインよると、以下の様な計算式により算出することが出来ます。
計画期間全体における修繕積立金の平均額の算出方法(㎡当たり月単価)
(算出式) 計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/㎡・月)
Z=(A+B+C)÷X÷Y
A:計画期間当初における修繕積立金の残高(円)
B:計画期間全体で集める修繕積立金の総額(円)
C:計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額(円)
X:マンションの総専有床面積(㎡)
Y:長期修繕計画の計画期間(ヶ月)
Z:計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/㎡・月)
※国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」令和3年9月改訂版6ページより引用
また、機械式駐車場がある場合は、以下の費用を追加する必要があります。
機械式駐車場がある場合の加算額
機械式駐車場の1台あたり月額の修繕工事費(下表)×台数÷マンションの総専有床面積(㎡)
※国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」令和3年9月改訂版8ページより引用
修繕積立金の算出方法
月額の修繕積立金額について算出してみたいと思います。
以下の条件のマンションを仮定してみましょう。
- 10階建て
- 総専有床面積5,000㎡
- 80戸(1戸当たり62.5㎡)
- 2段(ピット1段)昇降式で10台駐車
(月額の専有面積当たりの平均修繕積立金額252円/㎡+2段昇降式6,450円×10台÷総専有床面積5,000㎡)×総専有床面積5,000㎡=264.9円×5,000㎡=1,324,500円
が月額の修繕積立金の適正額と算出できます。
この金額を80戸で積み立てることとなりますので、全戸同一の専有床面積で考えるとすれば、
1,324,500円÷80戸≒16,556円
となり、これだけの金額を目安に各戸から徴収していく必要があります。
修繕積立金の積み立て方法について
修繕積立金の積立方法には大きく2つあります。
1つは均等積立方式と言われる方式で、期間中増額を見込まずに均等額を区分所有者から徴収するものです。
2つ目は段階増額積立方式と言われる方式で、当初の負担額は小さいものの、将来的な負担増を前提としているものです。
国土交通省は、将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点から、均等積立方式を推奨しています。
均等積立方式
こちらの図は均等積立方式のイメージとりますが、修繕積立金の年額が一貫してほぼ横ばいとなっています。
区分所有者にとって計画的な積立が可能な反面、必要以上の積立を行うことになり、長期修繕計画の見直しの際に増額になる可能性もあります。
段階増額積立方式
段階増額積立方式は、修繕積立金の年額が段階的に増額していることが分かります。
購入当初の負担は少ない反面、将来負担が大きくなることを想定しており、区分所有者間の合意形成が出来ない場合には、修繕積立金が不足する可能性があります。
その他、分譲時に修繕積立基金として一定額を徴収する場合や、積立金が足らない場合に銀行からの借入を行うこともあります。
おわりに
大規模修繕工事を行うためには、劣化により想定される修繕箇所や費用面等、長期計画的に進めていかなければならず、行き当たりでは対応できません。
特に大切なのはこれらを区分所有者間で早くから理事会や総会で共有しつつ、合意形成を取りながら問題意識を持って取り組むことです。
対応が早ければ早いほど、将来も明るく資産価値向上にも繋がるでしょう。