質を下げずに大規模修繕を行うための工夫
大規模修繕は、マンションの工事の中でも一番お金がかかる工事です。
工事代金が大きくなるということが値引による影響も大きくなることを意味しています。
5,000万円の工事代金で2%の値引ができれば、その差額は100万円、照明器具の交換程度ならば実施できてしまいます。
このようにできるだけ大規模修繕にかかる工事費は抑えたいという気持ちは強いものの、居住者皆様に影響を及ぼす工事ですので、「安心感」を優先してしまい、なかなか価格交渉や業者変更に積極的になれない管理組合も多いのではないでしょうか。
今回は、そのような管理組合の皆様へ向けて、質を下げずに大規模修繕工事を行うための工夫できることをお伝えいたします。
大規模修繕としっかり向き合う姿勢が重要
外壁の補修や屋上防水など、大規模修繕で検討される工事項目はどうしても専門的になります。
そのため、「プロが言うのならそうなのだろう」「知らない単語が並んでいて理解できない」と、管理組合として大規模修繕を管理会社や施工会社に任せてしまう姿勢になりがちです。
もちろん、プロの視点による見積の精査や工事監理も重要ですが、管理組合として他人任せにせずに大規模修繕と向き合う姿勢は忘れてはいけない事です。
また、大規模修繕は、自身の大きな資産でもあるマンションのことを理解できる十数年に一度のチャンスと捉えることもできます。
複数回の会合などに時間を割かれますし、多くのマンションでは時間を割いたことに対する報酬もありませんが、マンションを知る良い機会と捉えて前向きに大規模修繕に取り組むことが何よりも重要な事です。
複数社からの見積取得は必ず行いましょう
これは当たり前の事かもしれませんが、一番重要な事でもあります。
5万円、10万円程度の小修繕であれば、スピード感や過去の実績を基に1社からの見積であっても良いでしょう。
もしその1社の見積が少々高くても差額は数千円程度です。
ですが、大規模修繕は、見積金額が1%違うだけで数十万円の差になります。
これまで毎月貯めてきた貴重な修繕積立金を使う大きな工事ですので、これまでの実績のみではなく、多くの方にご納得いただくためにも複数社から見積を取るようにしましょう。
監理コンサルを導入する
大規模修繕の質を下げないためには「第三者の目」を作ることが最も効果的です。
管理組合は居住者の集まりですので、どれだけ勉強しても大規模修繕に日常的に携わる施工会社とは知識量の差があります。
良い施工会社に巡り会えれば良いですが、意識の低い施工会社に依頼してしまうと手抜き工事をされてしまう恐れがあります。
この対策には、施工会社と同じレベルで施工状況をチェックできる監理会社を導入する必要があります。
監理会社を導入するには相応の費用を要しますが、大規模修繕の品質を確保するという観点では、一番効果的な方法です。
施工会社への協力体制を作る
管理組合として、大規模修繕の質を確保する工夫の1つは、施工会社のストレスを減らすことです。
大規模修繕に着工すると、管理組合側でできることは少なくなります。
工事中の現場を確認してもそれが正しいのか、間違っているのかを判別するのは難しいでしょう。であるならば、施工会社の作業員が気持ち良く働ける環境を整えることで品質の確保へつなげていくように考えるべきです。
例えば、居住者への説明・説得の場です。居住者から足場架設時のドリル音に対するクレームや塗装の臭いなどのクレームが現場代理人や作業中の職人に入ることがあります。
また、バルコニーの荷物を移動してくれない、玄関ドア枠の塗装に対応してくれないなど施工に対して非協力的な居住者が現れる可能性があります。
施工会社も人であることを忘れない
施工会社は仕事として現場に入っているので、施工会社が対応すべき事案ではありますが、対応に追われるのは人であり、これらがストレスになって施工品質の低下につながる恐れがあります。
全てを管理組合で引き受けるのは難しくとも、
- 非協力的な居住者には管理組合役員が同行して説得に当たる、
- 大きなクレームの時は対応時に役員(委員)が同席するなど、
管理組合として施工会社に寄り添う姿勢を見せることは、施工会社スタッフのストレスを緩和させ、施工品質の確保につながるでしょう。
感謝状などの贈呈
大規模修繕の目的は、マンションの資産価値を維持して居住者が心地良く暮らせることです。そのために適切なタイミングで大規模修繕を実施します。
このように考えると、大規模修繕は、完工で終わりではありません。
完工後には部位によって複数年に及ぶ保証が継続しますし、1年次・2年次などにアフター点検を行う施工会社も多くあります。これら完工後の対応も含めて大規模修繕の品質とも言えます。
完工後のアフター対応をスムーズに実施してもらうにはどうするべきか。それは、このマンションは良い現場だったと思ってもらうことです。その1つの例が感謝状です。
大規模修繕業者の世間的な知名度は高くはない
大規模修繕を実施する業者の多くは、世間的な知名度は決して高くありません。
そのため、大規模修繕の相見積におけるプレゼンでは、「他の管理組合から好評を得て、感謝状を受領した」というのがセールスポイントになります。
施工中の差し入れや施工後の感謝状など、この現場は作業がしやすかった、良い現場だったと感じてもらうことによって、アフター対応の範囲内か否かの判断が難しい微妙な案件が発生したときの対応に差が生じるでしょう。
ひいては、完工後も含めた品質につながります。
質の高い大規模修繕を実現するために
大規模修繕が数十年に1回の失敗できない工事と考えると、積極的に工事の監理の仕組みを導入することを検討するべきです。
一方、管理組合が独自で大規模修繕の品質をチェックするのは難しく、管理組合としてできることは品質が落ちないように施工会社が気持ちよく作業できる環境を整えることです。
管理組合として大規模修繕を積極的に理解しようとする姿勢、また施工会社へ協力する姿勢が大規模修繕の品質を維持するためのポイントです。