オンラインを活用した理事会や総会の進め方のコツとは?
約3年近い環境変化により、外出が制限されオンラインでのやり取りが各所で頻繁に行われるようになりました。
マンション管理においても、理事会や総会の開催方法が最近の3年間で随分変わったことと思います。
出席せずに書面で議決権を行使して欲しいという理事会からの要請も多くなったのではないでしょうか。
そのような流れは、逆戻りすることはなく、便利になったものは継続的に利用されることとなります。
今回は利便性と安全性を兼ね備えたITツールを使った理事会や総会のオンライン開催について、確認します。
理事会や管理組合総会のオンライン化の背景
そもそも、理事会や総会のオンライン化の進行にはどのような要因があるのでしょうか。
昨今のコロナ禍の影響だけではなく、他にもオンライン化を推し進めた要因が考えられますので、そこを中心に見て行きます。
WEB会議システムの充実
元々はコロナ禍以前から、会社に出勤して仕事をする概念から、出勤しなくてもITツールを活用して仕事が出来るテレワークやリモートワークという考え方がありました。
仕事と家庭の両立も叶えられるため、政府や企業のトップ層が推奨するものの、業務フロー上、出勤しなければならないという義務感が定着し、テレワークが中々浸透しなかったのが実情ではないかと思います。
その後のコロナ禍の中で新しい生活様式が余儀なくされ、一気にテレワークが進んだ、そんな印象ではないでしょうか。
環境変化により、以前からあったZoomやGoogle Meet、Microsoft TeamsといったWEB会議システムが急速にクローズアップされ、使用されるようになりました。
普段の業務やコミュニケーションでこれらの便利ツールを使うようになった区分所有者や、管理会社が管理組合の会合で使おうと考えるのは自然な流れかと考えられます。
投資目的や別宅所有の区分所有者の増加
都心部マンションを中心に、投資用としてマンションを購入する方も増えてきました。
また、都心を離れ、地方に別宅のリゾートマンションを購入し、テレワーク勤務を行う新しい生活様式も見られるようになりました。
区分所有者においては、その場所に住んでいない場合もあり、極端な例でいうと海外に住んでいる区分所有者が、投資のために住戸を購入している例も考えられます。
そのような方でも総会における議決権を行使することが出来るのですが、オンライン開催となると議決権行使だけでなく当日遠隔からオンライン参加も可能となります。
管理費削減の必要性
管理組合としては、管理費を少しでも低減させたいという永遠の課題があります。
仮に完全にオンライン開催が可能になれば会場費は掛からず、また総会当日議事次第を投影することで議案の進行ができます。
管理会社のフロントもわざわざ担当マンションに赴くこともなく、事務所や自宅からWEB会議システムや電話を併用しながら参加することも可能でしょう。
オンラインの場合は、管理組合専用のWEBサイトに資料をアップロードしたものやメールで事前送付するなど、電子データで見てもらうのも可能になります。
これらの手間や印刷代の軽減を図る事が出来、管理組合が望む管理費の低減に少なからず寄与するものと考えられます。
理事会や管理組合総会のオンライン開催の進め方
オンライン開催をするに当たり、どのような点に注意しながら進めればいいのでしょうか。
特に確認しておいた方が良い点を見て行きます。
管理規約や細則の確認
マンションの管理規約においては、標準管理規約に則って作成されているものが比較的多いでしょう。
今回広がったITを活用した総会や理事会の開催については、国土交通省の見解では規約を変更しなくても開催は可能とのことです。
ただし、令和3年6月のマンション標準管理規約改正においては、ITを活用した総会や理事会についての明文化がされているので、分かりやすいこちらを採用することもひとつです。
加えて、ITを活用した総会や理事会の方法について、WEB総会実施細則で別段の定めをして手順をきめておくことも考えられます。
区分所有者への周知
WEB会議ツールをはじめとしたITツールの習熟度の兼ね合いから、オンラインで開催する場合は、掲示等を含めた区分所有者への用意周到な通知が必要であると考えられます。
またオンラインで参加する区分所有者に対しては、予めオンライン総会への出席方法を丁寧に説明したうえで、区分所有者の属性によっては事前レクチャー等のテスト開催も必要になるかもしれません。
システム環境の整備
区分所有者のIT環境だけではなく、主催者側の環境も整備しておかなければなりません。
とりわけ、オンラインだけでなく、リアルの参加も容認する、いわゆる「リアル+オンライン併用型総会」の場合は、通常のリアルの開催よりも準備が必要になります。
具体的には、リアルで開催する会場内に有線やwifiの通信環境が整っているか、また会場内での発言において、オンライン側でも聞き取れるようなマイクスピーカーの設置が可能かも確認が必要です。
さらに、会場にリアル参加している区分所有者と、オンラインで参加している区分所有者が同じ資料を閲覧するために、会場内は投影用スクリーンもしくはモニターや、プロジェクターが必要になったり等、それなりの手間が掛かります。
通信環境によっては、リアルタイムでスムーズな配信が行えない場合も生じるので、事前に通信テストも行っておく必要があります。
通常のオンライン開催に対応していないようなマンションの集会室でやる場合は、リハーサルを含めた準備も必要でしょう。
事前の準備として、会議用のURLの発行や、入室用パスワードが必要なセキュリティ環境を整えておくなども必要なため、普段WEB会議システムを使い慣れていることも大切です。
理事会においてオンライン開催を実施することでWEBツールを使い慣れたうえで、総会に応用していくことも考えられます。
オンライン開催にあたっての注意点
オンライン開催に当たっては、次に挙げる以外にも数々の注意すべき点が挙げられますが、一般社団法人マンション管理業協会による「ITを活用した総会の実施ガイドライン」を参考に、主な注意点を挙げてみたいと思います。
オンライン開催とリアル開催併用の検討
そのガイドラインによると、総会の開催方法としてこれまでの会場に集まって開催する「リアル総会」、さらにリアルとオンラインを併用した「リアル+オンライン併用総会」、さらにオンラインのみの「オンライン総会」に区分されます。
区分所有者の構成や、管理組合の規模、議案の内容、開催場所の環境、さらに区分所有者にとっての手間等を考えて、どの方法で実施するかは理事会内や管理会社と議論することで決定する必要があります。
区分所有者や管理会社におけるITリテラシーの確認
区分所有者の構成により、ITツールの使用に長けている方や、中にはパソコンを持っていない方もいらっしゃるでしょう。
いわゆる「IT格差」という概念ですが、ITリテラシーの高い招集者が、オンライン総会の開催を濫用的に行い、区分所有者が総会における出席機会を失うことがあってはならないとガイドラインには記載されております。
特に高経年マンションでは高齢者の方も多く、かならずしもオンライン開催が馴染まないこともあるため、感染リスクを配慮しつつリアル開催も検討することが求められます。
オンライン出席者の決議方法の検討
リアルな開催の場合は、その場で挙手をして貰うことで賛否を確認することが出来ますが、オンライン開催またはオンライン併用の場合は、オンラインで参加した区分所有者の賛否を適切に数える必要があります。
画面上の挙手ではタワーマンションの様に参加者数が多かったり、確認のタイミングによっては挙手したか否かで視認できない可能性もあるため、チャット機能や投票ステムを利用して、賛否の記録を残し集計する方法が考えられます。
オンライン参加者に対しての漏れがないように、カウントできる仕組みづくりを考えることが重要です。
まとめ
理事会や総会のオンライン開催は慣れれば対面によるリスクや、わざわざ会場に行く手間等が省けるため、非常に便利な反面、機材の準備や区分所有者の構成等、配慮しなければならない課題も数多く存在します。
これらのマンションの環境を配慮しつつ、まずは総会に比べ参加者数が少ない理事会でオンライン開催を実施し、理事会としてノウハウを蓄積してから総会を行うことも一つの考え方としてあるでしょう。
新しい生活様式の中で、区分所有者の価値観も多様化していることから、理事会や総会の開催方法が問われる時代になっており、管理組合としては今後の開催方法の在り方を検討することが大切です。