大規模修繕委員会結成から大規模修繕工事完了までの流れを紹介
大規模修繕工事を行う際には、理事会の専門委員会として大規模修繕委員会を結成することが一般的となっています。
理事は理事会に集中し、大規模修繕委員会は別で立てることで、理事の負担が軽減されるとともに、理事会、区分所有者とも合意形成が図りやすい工事ができるためです。
今回は大規模修繕委員会結成から工事完了まで、どのぐらいの時間が必要になるのか、解説します。
大規模修繕委員会結成から工事完了までの流れ
まず、大規模修繕委員会を結成してから、工事が完了するまでの流れを簡単に確認していきましょう。
理事会での大規模修繕委員会結成の討議
はじめに、理事会内で専門委員会としての大規模修繕委員会結成のための討議と決議が必要です。
理事会の諮問機関である大規模修繕委員会は、それ自体は権限は委員会の中だけであり、管理組合に対する権限はないため、理事会で結成の決議をすることができます。
大規模修繕委員の公募
理事会にて、大規模修繕委員会を結成することとなったら、区分所有者から公募で委員を公募するのがよいでしょう。
負担になりますが、できれば理事会から兼務者がいれば理事会と修繕委員会での連携もしやすくなります。
兼務理事は負担が大きいことから、修繕委員長は理事以外から就任すると尚可といえます。
小規模マンション等、立候補者がいない場合はやむを得ないので、理事会で大規模修繕について議論することも想定されます。
大規模修繕委員会結成
参加者が決まれば、第一回の大規模修繕委員会を開催し、大規模修繕に向けてのキックオフとなります。
まずは参加者の自己紹介からとなりますが、委員の中に建築や建設、不動産などの業界経験者がいなくても全く問題ありません。
専門的な知識は無くても、普段の生活の中から修繕委員会で活かせることが沢山あるでしょう。
工事方法の検討
修繕委員会で工事方式を検討することとなりますが、管理組合だけでは検討できない場合は、費用は掛かりますが、コンサルを入れて検討することも考えられます。
一般的な責任施工方式や設計監理方式、その他の方式など、どのような進め方をするのか議論することとなります。
管理会社がいる場合は相談することもできますが、お願いすることのメリット、デメリットを踏まえて検討することが望ましいでしょう。
大規模修繕委員会での工事検討と決議
工事方式の方向性が決まれば、委員会で施工業者から提示された相見積もり等を検討しながら、工事内容を検討していくこととなります。
前回の大規模修繕からこれまでの経緯や、長期修繕計画があればその状況等を確認することが必要でしょう。
それらを通じて、具体的にどのような箇所を工事するのか、修繕委員会で内容を詰めて行くこととなります。
理事会での大規模修繕工事決議
大規模修繕委員会で討議した内容を、理事会に上申して討議することとなります。
総会にかけても問題がなければ、理事会決議を通じて、管理組合総会に諮ることとなります。
総会での大規模修繕工事決議
大規模修繕委員会で討議し、理事会で決議した内容を、区分所有者に諮る機会となります。
大規模修繕工事の実施は、原則過半数での決議となります。
これは修繕積立金が足らずに借入を実施することとなっても、原則過半数です。
ただし、管理規約が古く、最新版の標準管理規約に則した改訂がなされていない場合は、特別決議となっている場合もあるかもしれませんので、注意が必要です。
加えて、区分所有法第17条に、共用部分の変更でもその形状又は効用の著しい変更を伴うものは、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決することとなっているので、注意が必要です。
さらに、一度で決議するよりも、複数回の総会に分けて段階的に決議すると、合意形成がより図りやすいといえるでしょう。
具体的には、大規模修繕工事を実施することや業者の選定の決定をまず決議し、その後、金額が明確になった段階で改めて金額や工事の具体的内容を決議するなどの工夫も考えられます。
区分所有者への工事説明会
工事実施前には、必ず区分所有者への工事説明会が必要です。
できれば、こちらも工事実施直前の注意事項の1度ではなく、その前に工事全体計画や内容を含めて、総会決議前など含めて複数回実施することで、区分所有者の不安を払拭できることとなるでしょう。
大規模修繕工事開始
工事実施時期には、注意事項等が施工会社から毎日共有されることとなります。
洗濯物を干していい日や、窓ガラスの戸締りの徹底等の注意事項です。
大規模修繕委員会としては、工事進行状況等を施工会社や管理会社と協力しながら広報することで、区分所有者の不安を払拭することも大切です。
工事期間については、小規模なマンションの場合は3ヶ月〜半年程度で終了しますが、大規模なマンションの場合は1年近く掛かる場合もあります。
大規模修繕工事完了
天候により、計画通りに工事が進むかどうかは不確定な点もありますので、工事完了日が前後することとなります。
また、終了後には、大規模修繕工事関連の図書や最新の長期修繕計画等、書類は今後の大規模修繕に備えて、適切に管理組合内で保管しておくことが望まれます。
さらに、一連の工事を通じて、今回工事しなかった箇所や、将来的に不具合が発生しそうな箇所等改めて確認し、長期修繕計画を更新することも必要です。
国や自治体のマンション評価制度である管理計画認定制度により、マンションに対するチェックがこれまで以上に必要になってきています。
その場合、長期修繕計画は30年以上のものが必要であり、2回以上の大規模修繕工事が含まれることが確認条件としてありますので、適切に運用することが非常に大切です。
大規模修繕委員会の結成と委員会の進行は?
そもそも、大規模修繕委員会を結成した方がよいのはどのタイミングでしょうか。
早ければ早いほど合意形成が取りやすいともいえますが、直前の結成となると議論ができないまま始まることとなったり、スケジュールがまとまらずに延期することとなります。
大規模修繕委員会の結成は工事開始2~3年前から
マンションの規模にもよりますが、工事開始2〜3年前から、検討し始めることが考えられます。
区分所有者で委員に参加する方は、平日は仕事を持ちながら、週末か夜間に対応する方がほとんどでしょう。
そのため、区分所有者への合意形成を考えると、工事開始まで比較的余裕を持った計画が望まれます。
具体的な年度の大規模修繕委員会進行イメージ
例えば、3年目の後半から工事を開始するとすると、大規模修繕委員会で進行するイメージは、
1年目は、現状のマンションの状況確認と工事の方式や工事会社の選定
2年目は、工事会社の決定と金額の精査、総会決議
3年目は、金額や工事内容確定の総会決議、工事開始
という考え方もあるでしょう。
大規模修繕委員会結成から工事完了までトータル3〜4年見ておく必要があり、参加してくれるメンバーを募ることが非常に重要となります。
近年では材料費や人件費が年々高騰しているので、時間をかければいいという訳ではありませんが、余裕を見ることにより、確認しながら漏れなく吟味することができるのも事実です。
まとめ
大規模修繕工事開始前の検討段階から、工事完了までの流れを紹介しました。
工事開始前において、大規模修繕委員会にてどれだけ議題して工事内容を検討できるかが、重要であるといえるでしょう。
計画的に大規模修繕工事の時期から逆算し、スケジュールに余裕を持って検討していくことが望まれます。