大規模修繕に向けた長期修繕計画の見直しと作成のポイント
長期修繕計画とはマンションの修繕工事の内容・周期・概算費用をシミレーションをしたものが長期修繕計画であり、区分所有者が管理組合に支払う修繕積立金の算定根拠となるものです。
しかし、建物は人間と同様、生き物。様々な内的・外的要因の影響から逃れることが出来ず、理論だけでは管理できない、そこに長期修繕計画の難しさがあります。
長期修繕計画見直しの必要性
先に述べた通り、建物は様々な内的(当該マンション固有の事情)・外的(法改正や災害、技術革新など社会的な事情)に影響を受けざるを得ません。
従って、長期修繕計画も、一旦作成したらそれに依拠しなければならないといったものではなく、マンションに関わる内的・外的要因を勘案しながら改訂することが必要です。
計画見直しの内的要因
内的要因として考慮すべき重要事項は、当該マンションの劣化度の進行具合であり、修繕時期が近づいたら劣化診断を行って修繕計画改定の要否を検討することが必要と思います。
多額の費用を掛けなくとも、建物設備の大凡の劣化具合を把握することは可能であり、このような診断により、長期修繕計画書に基づく修繕計画の妥当性・相当性が(或いは修正必要性が)検証されるのです。
尚、事情により一定程度大きな改修工事を単発で行ったような場合にも、修繕計画の改訂が必要であることは言うまでもありません。
計画見直しの外的要因
外的要因は実には様々ですが、一般に3~5年毎に計画の妥当性・相当性を見直すことが必要と言われています。
これには、建物が陳腐化して時代遅れ(財産的価値・資産価値が低下します)にならないように、との意味も含まれています。
長期修繕計画の作成に当たって
国土交通省から出されている「長期修繕計画標準様式」「長期修繕計画作成ガイドライン」などを参考にしながら作成することになります。
作成の際に留意しておくべき事項には次のようなものがあります。
1.長期とは
一般に、長期とは25年程度とされています。あまり短期ですと、修繕積立金徴収の目安にならないと思います。なお、見直しの必要性に鑑み、見直し予定年次も計画されていることが望ましいと思います。
2.修繕項目
建物・設備の主要・基幹部が全て網羅されていること。30項目程度になるはずです。
3.費用の算定根拠
工事費用の概算額が明示されていることは当然ですが、その算定根拠(数量・単価等)が明示されていることが望ましいです。そうでないと、計画改定の時に、なんでこんな数字が計上されているんだろうということになりがちです。
4.大規模修繕の周期
大規模修繕の周期は概ね12~15年程度です。前記の通り、工事時期近くには劣化診断が必要で実施年の調整が必要になります。管理会社がこれよりも短期のサイクルを提示したら、その根拠を示すよう求めましょう。
言うまでもなく、サイクルが短ければ、当該マンションの一生のうちで修繕にかかるコストが増大します。
5.資金調達の適正性
当たり前のことですが、当該長期計画で資金計画が成り立っているのかのチェックが必要です。
長期修繕計画は、改修工事計画であると同時に資金計画ですから、これが成り立っていない計画には意味がありません。
成り立っていないとすると、工事計画が誤っているか、修繕積立金額が不適正ということであり、長期修繕計画の策定と同時に検討・改正することが不可欠となります。
尚、管理会社が当該修繕計画を修繕積立金値上げの道具として提案してくる場合もありますから(言うまでもなく、高額工事を提案して儲けるためです)、管理組合独自の十分なチェック・検討が必要となります。