マンションの給排水管の修繕について!工事サイクルと更生工事と更新工事について
生活していると昼夜問わず毎日使っている水回りですが、そのインフラとなっているのが水道水を各戸に供給する給水管と、使用後の排水を流すための排水管です。
その給水管と排水管(以下、まとめて給排水管と記載)については、マンションの経年とともに日々劣化していきます。
今回は給排水管の劣化に対して工事を検討する場合、どのような点に注意して行けばいいのか、見て行きたいと思います。
給排水管工事の確認ポイント
給排水管工事をする前に、どのような点に注意すればいいのか、まずは確認しておきたいポイントを挙げてみます。
給排水管工事の実施タイミング
給排水管はどれぐらい経過すれば劣化してくるのでしょうか。
当コラムでは頻出ですが、国土交通省による「長期修繕計画作成」から確認します。
同ガイドラインによると、給水管、排水管ともに、工事のタイミングは同じ期間で想定されています。
更生工事は19~23年、取替(更新)工事は30~40年周期で行うことが望ましいとされています。
ちなみに更生工事とは、配管はそのままで延命させるための工事であり、更新工事は、配管を取り換える工事を言います。
専有部分と共用部分の同時更新
給排水管は、マンションの階上から階下まで縦に通す立て管や、各戸までを通す横枝管で構成されますが、これらについてまとめて実施することで効果を発揮します。
しかしながら、横枝管は専有部分に該当する場合もあり、専有部分と共用部分の工事を一体化して実施するのは、規約の確認とともに、区分所有者の室内工事に及ぶ場合の理解や合意形成も必要になってきます。
標準管理規約に準拠している場合は、標準管理規約第21条(敷地及び共用部分等の管理) にて、一体的に行うことができるとされています。
費用負担 については、修繕積立金から取り崩して実施するのか、それとも各戸から徴収するのかは、既に独自で専有部分の配管を取り換えている場合があれば、各マンションで検討すべき課題でもあります。
給排水管の調査方法
給排水管の劣化状況は、事前に調査・確認が必要になります。
おもな給排水管の検査方法としては、非破壊検査としての内視鏡検査、破壊検査としての抜き取り検査があります。
またその他の方法についても触れていきます。
内視鏡検査
給排水管に超小型カメラを通して、給排水管の中の状態を見ていくもので、人間ドックにおける胃カメラのイメージです。
人間の体内機能同様、マンションも経年により給排水管が劣化すると考えればイメージが湧きやすいかと思いますが、それと同様の方法で調べていくもので、ファイバースコープを使用する場合は約3m、テレビカメラで20m程度の測定が可能です。
これにより給排水管内における錆コブの状況や汚れ具合や詰まり具合など、給排水管を破壊せずに視覚的に確認することができます。
そのため、理事会や区分所有者に対する説明も状況を示しながら行いやすいのが特徴ですが、配管の残存肉厚や劣化状況については正確に測定できません。
抜き取り検査
実際に使用している配管を切り出す検査ですが、これにより内面の腐食状態を確認することができます。
図のように、切り出したサンプル管を半分に割り、その後ブラスト又は酸洗いによる内面スケール除去行い、測定機器による腐食深さ、配管の残存厚さ測定を行います。
理事会や区分所有者に対して、実際に劣化状況が手に取って分かりやすい反面、断水や排水の使用禁止時間があったり、抜き取った配管の分析結果まで時間が掛かるなどの課題があります。
エックス線透過試験調査は、電磁波により物を透過してフイルムに感光させる作用があり、その透過度合いによりフイルムに白黒濃淡の影像を写し出します。
こちらも人間ドックで同様の検査があるので、そのイメージに近いかと思います。
マイクロコンピューターにより解析し、継ぎ手部分の残存肉厚や直管部分の腐食状態までも測定可能な方法ですが、労働安全衛生法などにより定められた有資格者にて作業を行うことや、撮影中、半径5メートル以内は立ち入り禁止等の制約があります。
更生工事と更新工事
調査ののち、劣化具合や工事費用、また修繕積立金の状況によって、更生工事で延命を図るか、更新工事を行うかを検討しなければなりません。
それぞれの特徴について見ていきます。
更生工事の特徴
更生工事は、給排水管を延命させる工事として、まずは汚れている配管内の研磨を行うことで、錆や汚れの除去を行います。
その後に、錆の再発や汚れの付着をふせぐための樹脂塗料によるライニングを行い、配管の内側をコーティングします。
更新工事に比べて工事期間が短かったり、費用が抑えられること、建物の一部解体や復旧作業が不要、騒音や振動などの影響が少ないなどが挙げられます。
一方で、劣化が進んだ配管には対応できない事や、更新工事に比べて施工後の耐用年数は10~20年と短い事、あくまでも延命工事であるため、使用状況によっては今後の安全性や衛生面における影響が出る可能性るなどのデメリットもあります。
更新工事の特徴
配管の更新(取替え)を行う場合においては、前述の通り、共用部分と専有部分双方行うのかも検討課題に入ってきます。
とりわけ共用部分の工事においては、これまでの配管を残したままで新設できるのか、それとも外部に露出させて通す必要があるのかなど、検討すべき課題もあります。
さらに取替えの場合は、竣工時から一度も変更していない、比較的経年しているマンションは新しい素材の配管を導入することで、これまでの課題であったつまり等の課題も解消されるでしょう。
給水管においては立管においては炭素鋼管からステンレス管へ、専有部分への横枝管としてポリエチレン管やポリブデン管が採用されています。
また、排水管においては、かつては流し台の全面瞬間湯沸かし器の設置が主流であり、高温の排水も想定されたため、ビニール管では対応できず、炭素鋼管や鉛管で対応していました。
錆で漏水が起こり始めたことにより、炭素鋼管や鉛管が次第に廃れ、更に室外の給湯器により給湯することで高温の排水が発生せず、錆に強いビニール管でも対応できるようになっています。
また排水用特殊継手を採用することで、立管本数の減少も期待できます。
更新工事は、更生工事とは逆に配管において新品の部材を採用するので、耐用年数がこれまでよりも長い材質のものも使用できる、漏水リスクが減る、安全性が高い、などが挙げられます。
一方で、建物の一部解体や復旧が必要になったり、工期が長く費用が高くなる可能性があります。
また施工業者やスペース次第では配管が外壁に露出し、美観や資産価値に影響を与えることや、また工事における騒音や振動の発生も危惧されることなどが挙げられます。
更に、共有部分とともに専有部分の配管の取替えを行う場合は、各戸の床や天井、物置等配管が通る箇所を解体しなければならず、区分所有者にとっての生活上の負担も大きくなる可能性もあります。
まとめ
今回は給排水管工事についての全体像について見てきました。
普段我々が使用しているマンションの給排水管は、365日昼夜稼働していることから、日々劣化へ向かっています。
漏水した状態ではすでに時遅く、定期的な調査や手当てが必要であることがご理解いただけたかと思います。
少しでもお住いのマンションの給排水管工事の参考になれば幸いです。
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給排水は非常に難易度の高い修繕工事です。お困りのことがあれば公募の相談より申し込みください