マンションの理事長、副理事長、理事、監事、それぞれ役割について
分譲マンションには「管理組合」という組織が形成されます。
マンションを適切に維持管理するのは、管理会社ではなくそこに住む組合員自身。組合員全員で組織し、マンションの資産価値の維持向上に努めるために活動するのが管理組合です。
この管理組合、実際に運営する際には組合員の中から代表者を数名選任し、「理事会」を形成します。
そして更にこの理事会のメンバーの中から役職を決め、マンションのために活動をしていくこととなります。
具体的には、理事長、副理事長、理事、監事の4つの役職です。
この中で何かしらに選任された際、「自分に務まるだろうか・・・。」と不安を覚える方も多くいるかと思います。
しかし、マンション管理に関する知識やスキルが無いのは当然。ある方が珍しいでしょう。大事なのは、自身の立場や役割を充分に理解し、適切に行動できるかどうかです。
そこで今回は理事会の役職とその役割についてご紹介しましょう。
理事長の役割ついて
理事長は文字通り理事会の長です。
理事会や総会での議題の調整や進行、管理会社との窓口をおこない、契約関係の際に代表者として署名捺印を行います。会社でいうところの代表取締役社長といえば分かりやすいでしょう。
何十人、場合によって100人以上の組合員を代表することとなるため、客観的な視野を持ちマンション全体にとって有益な選択は何かという観点を持って判断をすることが必要となります。
こういうと非常に責任の重い立場のように思われますが、日頃重役を務めているような方しか理事長が務まらないわけではありません。
日頃の生活の相談事や修繕箇所の相談等が議題のメインテーマとなるため、理事長一人で何かを考え込んだり判断したりするケースは殆ど無いといえるでしょう。
理事長だからといって特別な権利はない
議事内で何かを決議する際の議決権は他の理事と変わらず「1」です。
つまり、多数決を決する際のパワーバランスは他と同等なのです。
そのため、前述した役割は建前で、実際には理事会の中で皆が意見を言い易い雰囲気を作り、その意見や話を上手にまとめるような柔和でオープンマインドな人柄が求められることとなります。
管理会社との窓口も重要な役割のひとつ
管理会社との窓口も理事長の重要な役割のひとつです。
管理会社は管理組合よりマンションの清掃や点検業務を管理会社に委託管理を受け作業を行っています。
故障や破損、住民からの苦情や相談等の対応窓口にもなっています。
この管理会社の業務の中で、何ら問題なく業務遂行や解決が済めば問題ありませんが、これが管理組合として何らかのアクションを起こさなければならない場合、理事長に相談されることとなります。
例えば、急を要する修繕が必要なとき、住民に対し速やかに注意喚起や周知をしなければならないときには管理組合として行動する必要が発生します。
理事会での決議をするまでの時間的余裕が無い場合は理事長に個別相談し対応するケースが往々にしてあります。
そのため、理事長はマンションの状況や懸念や問題として挙がっていることをきちんと把握、理解しておくことが必要となるでしょう。
理事長のワンマン運営にはしないように
最後に、これは管理組合に限らずどの組織にも通じて言えることですが、ワンマン運営となることだけは避けましょう。
立場上「理事長」と名が付くと、権力があるものと誤認するケースも時たま見受けられます。理事長は組合員を代表する立場であり、組合員達の総意の代弁者といえます。
時には自身の考えと異なる方向に向かうこともあるかもしれませんが、マンションに住む様々な人達の目線や意見を汲み取り、多くの人が納得できるような点に着地が出来ることが理想です。
前述したとおり、理事長という名はありますが、議決権は他と変わらず「1」です。
自身で何かを動かす、コントロールする、誘導するという意識を持ちすぎることは、結果として他の方々との軋轢を生んでしまうこともあるでしょう。
理事長ではありますが、「理事のひとり」であるという自己認識を持ち接することが重要です。
副理事長の役割について
理事長の補佐の役割をもち、理事長の不在時に代理としてその職務を対応することとなります。
そのため、理事会や総会時、契約の締結、管理組合名での書面の発行の際等に、理事長が不在であった場合には、副理事長の人間がその名で業務を行うこととなります。
業務内容は前述した理事長の業務と同じで、副理事長専用の業務というものはありません。
但し、理事長の代理を務めなければならない場面がいつ来るか分かりません。
そのため、理事長と同様に常にマンションの状況を把握し、いつでも代理が務まるよう準備しておく必要があるでしょう。
副理事長は理事長の良き相談役に
理事長のサポート役として、よき相談相手となれれば理想的です。理事長は管理会社との窓口や契約の締結、報告書の押印等、重責務とまではいきませんが、それなりの責任と負担、労力はかかるものです。
管理組合の代表者であるため、これら業務そのもの全てを肩代わりすることは出来ませんが、何か頼れたり協力してくれる存在が身近にいると思えるだけで気持ちは楽になるものです。
補佐という立場ではあるものの、理事長と協働という意識を常に持って活動することが重要といえるでしょう。
理事の役割について
理事は理事会の一構成員です。理事会に出席し議題に対し自身の議決権を行使する立場となります。
理事長や副理事長と異なり、何らかの特別な役割を持っているわけではないため、負担は最も少ないといえるでしょう。
だからといってなにもしなくともいい訳ではありません。
第三者としても客観的な視点を
まずは当たり前ですが理事会に出席しましょう。
そして理事長、副理事長は議題の統括をする議長の立場と捉えると、最適な会議のためには、第三者として客観的な視点を持った立場の人間の意見が必要です。
「理事」としての議決権
また、理事会での決議については、出席議決権の過半数によります。
全員満場一致の案件であれば問題ないですが、意見を二分するような場合は、理事の持つ議決権「1」も大きな意味を持つこととなります。
組織を動かしたり、意見をまとめるときには時間と労力がかかります。その矢面に立つ理事長や副理事長は、そのリードに目が行き細部を見落としてしまうこともあるかもしれません。
そんなときに、大きな仕事をもっていない理事が、細かい部分に目を向け、落とし所や抜けが無いように動く事が出来れば、理事会は円滑に活動することが出来るといえるでしょう。
縁の下で支えることの出来る人が適任かもしれません。
監事の役割について
監事の仕事は監査です。理事会や総会での運営が適切に行われているかチェック、決算月が終了すると年間収支の会計監査をおこなうことが主な業務です。
一歩引いた距離から理事会の活動を客観的にチェックする、第三者委員会的な要素を持つ立場と言えるでしょう。
そのため、監事の業務は理事会の動きと相反することとなるため、理事会の構成員としてはカウントされません。
従って議決権も持たず決議に参加できない立場です。
ここまでの話を読むと非常にドライな存在のように感じますが、実際の理事会の現場では、そこまで監査的な目線は求められません。
住民同士の中で不正を働こうと動く人などそうそういませんし、波風を立てることを望む人もいないでしょう。
日頃の理事会で何かを監査したりチェックする必要があるかといわれると、そう多くは無いといえます。
監事の仕事でもっとも重要なのは会計監査
そんな中で最も重要といえるのは、前述した会計監査です。管理組合が年間で行った物品購入や維持管理のための点検、修繕等の支出項目費用の伝票が、収支報告書上通りに計上されているかどうかをチェックする必要があります。
先ほど、「不正を働く人などそうそういない」と前述しましたが、不正が起こりうるとすればこの金銭関係でしょう。
過去、理事長や監事という立場を利用し管理組合の費用を横領し逮捕されたケースが複数発生しています。
管理組合の会計管理は基本的には理事会で行われ、収支状況をリアルタイムで把握できる人間は理事会に限られます。
日頃の住民の関心は低く、その割に、ある程度まとまった費用計上を持つ管理組合費用は不正を見逃されやすい要素を持っているといえるでしょう。
組合員から徴収した大事なお金を管理する立場として、こればかりは年に1回の大仕事と捉え業務に当たるべきです。
まとめ
以上、主な4つの役職をご紹介しました。
理事会として選任されない限りなかなか日頃接することとの無い業務内容だと思います。
一方でマンションを管理する側に立つことで、これまで知りえなかった情報や気をつけなければならないこと、良い住環境にするために動くべきこと等、マンションをより客観的に俯瞰で見ることが出来るようになると思います。
確かに時間と労力はかかることではありますが、自身の大切な資産であるマンションのために邁進することをライフワークの一つとして理事会に参加してみてもよいでしょう。