修繕積立金の必要額と大規模修繕の費用について
大規模修繕の費用は、マンションの区分所有者の方であれば誰もが気になる費用ではないでしょうか?
大規模修繕の費用は毎月支払っている修繕積立金から支払われます。
修繕積立金は毎月の支払いであり、極力抑えたいと思う一方で、修繕積立金は抑えすぎても将来苦労することになるため、一概に安い事が正義とは言えません。
今回は修繕積立金の適性額と大規模修繕の費用についてについてご紹介します。
大規模修繕実施とは
大規模修繕とひとくちにいいますが、特定の工事を大規模修繕というわけではありませんが、国土交通省は大規模修繕を以下のように定義しています。
大規模修繕とはマンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するために行う修繕工事や、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図るために行う改修工事のうち、工事内容が大規模、工事費が高額、工事期間が長期にわたるものをいう
国都交通省 マンションの改修・建替え等について
工事の期間が長く、工事金額が大きい工事、それを大規模修繕と国交相は定義しています。
一般的には、外壁の塗装、防水を合わせて行う工事を大規模修繕と指していることが多いです。
日々の修繕と大規模修繕工事について
マンションに住んでいると、所々に劣化が発生し、修繕対応が必要となってくるのが分かるかと思います。
建ってから長年経過しているマンションは所々に経年による劣化が見られ、日々の継ぎはぎの修繕では対応できなくなってきます。
大規模修繕工事はその工事とは別で主で行う工事です。
管理費と修繕積立金の違い
清掃や管理人、出納業務などの日々の管理のための費用として、管理費が徴収されます。管理費は普段の清掃や管理組合運営等、管理のための費用として充当されます。
一方で、マンションの修繕にかかる工事を行うための費用は修繕積立金として徴収され、将来のために積み立てられます。
規模が小さいちょっとした修繕は管理費から充当されることもあります。
管理費と修繕積立金は区分して管理される必要があり、混同してはいけない点も注意が必要です。
なお、余談ですが、多くのマンションでは、本来多く積み立てなければならない修繕積立金の支払いが低く、抑えるべき支出である管理費が高いケースが多いです。
修繕積立金よりも管理費が高い、そうなっているマンションは注意が必要です。
修繕積立金の適性額
管理費と修繕積立金は別であり、適正額を積み立てなければなりませんが、果たしてどの程度が適正額なのでしょうか?
実際に算出してみたいと思います。
必要な修繕積立金は?
本来必要な修繕積立金は、完成年次、戸数、更に階数や機械式駐車場がある場合等でそれぞれ違いが出てきますが、概算値で
- 修繕積立金の適正額は200円/㎡・月
- 機械式駐車場がある場合は、1台あたり9,000円/月
と考えます。
例えば、占有床面積70㎡、機械式駐車場台数20台、総住戸数80戸のマンションに暮らしていると仮定して、上記計算式に数値当てはめて計算してみます。
機械式駐車場がある場合
(200円×70㎡)+(9,000円×20台÷80戸)=16,250円
機械式駐車場がない場合
(200円×70㎡)=14,000円
と試算出来ます。
機械式駐車場がある場合とない場合で変わってきますが、「修繕積立金の適正額=200円/㎡・月」が一つの目安になります
修繕積立金が不足する場合の対応は?
多くのマンションで修繕積立金が足りないと言われる昨今、修繕積立金が不足する場合も考えられます。
実際に大規模修繕の見積もりを取得し修繕積立金が不足する場合、予算内に収まるように、材質を検討したり、工事を延期したりする方法があります。
不足する場合の対応については下記でまとめていますので、参考にしてください。
大規模修繕の適正額の把握方法
平米当たりの月間の修繕積立金について大枠の把握が出来ました。
次は大規模修繕のための費用の目安の算出を考えて行きたいと思います。
大規模修繕費用の概算値
大規模修繕の費用は1戸あたり100万と言われます。
先ほどの占有床面積70㎡、機械式駐車場台数20台、総住戸数80戸のマンションであれば、
80戸 × 100万 =8000万円
となります。
ただし、マンションの形状によってその費用感は変わります。外壁の面積が2000㎡と3000㎡では、必要な材料も足場の器材も数がことなります。
あくまで目安として捉えることが重要です。必要な費用についてはこちらのリンクも参考にしてください。
仮に大規模修繕が8000万円だとして、12年で8000万円あればよいのでしょうか?
答えは残念ながらNoです。
なぜなら、マンションの修繕は大規模修繕だけではないからです。
12年で必要な修繕積立金
先ほどのマンションケースをもとに、計算上、全戸の専有面積を70㎡として必要な修繕積立金を計算してみましょう。
年間で区分所有者から徴収する修繕積立金は、先ほどの機械式駐車場がある16,250円/月の修繕積立金を用いると、未徴収が無く全戸から適正額を回収することが出来た場合には、
16,250円/月×12か月×80戸=15,600,000円(1560万円)
となります。
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは一般的に12年周期で行うとされているため、この数値を用いると、
15,600,000×12年=187,200,000円
と算出できます。
つまり、12年で1億8千万円も必要なのです。
単価200円として算出しているため、劣化具合では多少なりとも前後する可能性があるため、目安額で見て頂ければと思います。
けれど、国交省のガイドラインではそうなっているのです。
工事会社に対する相見積もりの取得と工事会社の選定
実際に大規模修繕を実施するにあたっては、工事会社の選定が必要です。
工事会社の選定は責任施工方式、設計監理方式等、活用していく管理方式によっても異なってきますが、合理的な判断をするためにも、管理組合の目線で相見積もりを比較検討する事が非常に大切です。
また、一番安い工事会社を選定することがいいとは限らず、さらに管理会社系列の工事会社がいいとも限りません。
各工事会社から相見積もりを取り、工事内容を精査していくことが大事であり、その場合客観的に判断できる専門家を選定することも大切です。
その際に普段付き合いのある管理会社系列の工事会社からも見積もりを取得することもありますが、各社を良く比較検討し、見積内容に対する適切な価格を吟味する必要があります。
特に一番近くにいる管理会社の言われたままに進めることは避けたいものです。
管理会社との向き合い方
マンションを管理する管理会社は、日々の経理業務を請け負う事もほとんどであり、修繕積立金がいくらあるかを当然に把握しています。
それを加味しながら系列の工事会社とともに大規模修繕の提案をしてくることも大いにあり得ます。
管理会社は日々のマンション管理での稼ぎは不十分であり、大規模修繕を受注することで埋め合わせてくることも考えられるのです。
弱みを握られている立場であるうえ、法外な工事費を提案してくる可能性もあるため、管理会社経由での工事会社以外からも必ず見積もりを取得し、比較検討することが望まれます。
終わりに
修繕積立金が足りないからと言って、すぐに修繕積立金を値上げしないといけないわけではありません。
無駄な工事費を払っているのであれば、それを削減していけばいいのです。
もし無駄な工事を削り、20%の工事費を削減できたなら、仮に1億8千万円の修繕金が必要として、20%削減できれば3600万円の工事費です。
10年後も修繕積立金がなくならないように、ぜひ賢く削減をしてください