これからマンション管理会社と管理組合の関わりはどうなるのか?

管理組合にとっては耳の痛い話ですが、人材不足による管理員さんやフロント担当の人件費の高騰が続いています。
管理組合においては管理費の見直しや、場合によっては管理会社から管理費の値上げ、極端な例では契約終了の話も出て来るでしょう。
今回は管理組合と管理会社との間で何が起きているのか、また今後管理組合としてどのように対応していかなければならないのか、確認していきます。
管理組合や管理会社で起きている状況とは?
人件費高騰や働き方改革を背景に、近年では管理を委託する管理組合や、受託する管理会社の環境が急速に変わってきています。 管理組合と管理会社の各現場で、どのようなことが起きているのか、確認していきます。
管理会社を取り巻く環境
管理会社においても、業界内外の他企業と同様に、働き方改革を背景とした労働環境の構築を行う必要が出て来ています。
現場担当フロントが、過重労働にならないように、残業時間の管理が適切になされるようになっています。
残業を行った場合においては、適切に残業代を支給しなければならず、不払い残業代は会社を揺るがす社会的問題にも直結することとなります。
一方で、残業が増えた場合には、管理会社にとって人件費増に繋がる事から、働き方改革も相まって残業への配慮がなされていると考えられます。
また、管理組合からの過剰な要求には対応しないような風潮もあり、サービス水準として過剰になりすぎないような配慮もなされているようです。
さらに、管理会社が管理する管理員さんの高齢化とともに、人材の確保が非常に難しくなっている現状があります。 これらの事象により、管理会社としても管理組合に対して様々な要請をせざるを得ない状況が出て来ているようです。
これらの事象により、管理会社としても管理組合に対して様々な要請をせざるを得ない状況が出て来ているようです。
管理組合の現状
一方の管理組合側としては、管理会社を取り巻く環境に影響される形で、日々の管理を受け入れなければならない状況にあります。
具体的には、管理費は変わらないにも関わらず、これまで対応してくれていたことに管理会社や担当フロントが対応してくれなくなったり、管理員さんの勤務時間が減った、などの影響が出ています。
特に高経年マンションでは高齢者が増加しており、よりサポートを強化して欲しいと望むところでしょう。
しかしながら、中々管理組合側の希望が叶わずに、管理組合が管理会社の意向を受け入れざるを得ない状況になっているのが実情のようです。
管理会社が管理費以外で埋め合わせ
もう少し深堀をすると、管理会社の台所事情として、管理費の収入だけでは採算が合わず限界に来ていることも考えられます。
また管理会社としても、マンションの事情や評判を鑑みると、管理組合との契約を一方的に解除するわけにもいかず、継続している所もあるでしょう。
そのような関係にある場合、多くの管理会社は管理受託マンションに対して、大規模修繕工事において責任施工方式で受託することにより、管理費を埋め合わせているケースもあるようです。
管理組合と管理会社との間で想定されること
最近の事象から考えて、管理組合と管理会社の間で想定されることを確認してみます。
自ら区分所有者となっているマンションにおいて同様の事例が発生していないか、チェックして頂ければと思います。
管理会社による急な管理費の値上げ要請
まず、管理組合総会を前に理事会宛に管理会社から、「来年度から委託管理費の値上げをして欲しい」という提案が考えられます。
実際に管理会社から、30%程度の値上げを要請された例もあるようです。
急激な値上げとなる背景として、管理会社にとって、これまで値上げをしてこなかったのは、値上げを提案するタイミングを逸してしまっていたこともあるのでしょう。
管理会社としても我慢はしてきたものの、昨今の人件費等の急騰により、これ以上はやむを得ず値上げに踏み切る例も多いようです。
管理組合が管理費値上げに反対した場合
管理会社も商売であり、これまでのマンションとの関係もある事から、管理会社から一方的に管理委託契約終了を突きつけられることは少ないと思います。
しかしながら、「来年度から管理委託費の値上げをさせて欲しい」という要請に対し、理事会や管理組合側が値上げに反対した場合、管理会社からの管理委託契約の終了は十分考えられます。
管理会社としては我慢の限界が来ている例であり、管理会社における苦肉の策であるものの、管理組合側としては更なる負担を考えると受け入れられない事情もありそうです。
管理会社変更による管理の質の低下
結果的に、管理組合の台所事情を考えると管理会社の変更もやむを得ない選択肢になる場合もあるでしょう。
その場合、これまでよりも安価で引き受けてくれる管理会社を探すこととなります。
安価で引き受けてくれるとなると管理組合としては助かりますが、安いということには何らかの事情があります。
管理の質が低かったり、これまで管理会社がやっていたことを管理組合自らで実施しなければならないということも提案されるでしょう。
マンション管理においては、他の業界に漏れずマンション管理の相場があると言われています。
一定以下の金額になると、ある程度の質の低下はでてくることは想定しておく必要があります。
管理組合としてどう対処していけばいいか
前章でのそれぞれの事象において、管理組合としてどのように対処して行けばいいのでしょうか。
コラム最後の章にあたって、具体的な対応策について考えていきます。

管理会社の変更は慎重に検討
当然の話になりますが、管理会社変更は、慎重に行うべき事です。
これまで見てきたとおり、管理組合からの主張として、「現状では高いから管理委託費を値下げして欲しい」は中々通らない状況になってます。
逆に、管理会社から値上げを提示されたものの、管理組合側が納得できない場合であっても同様でしょう。
「値上げは難しい」と管理組合側から言った場合、管理会社からは、契約終了を検討して欲しいと突きつけられる場合を想定しておく必要があります。
また、良くても管理員さんの勤務時間の縮小等で業務を減らすことによる、管理の質の悪化の提案で、価格を維持するということも考えられます。
マンション管理の質と管理委託費のバランス
管理会社側からの提案が受け入れられない、または管理組合側の台所事情により管理委託契約を解除する場合において、新たな管理会社を探さなくてはなりません。
変更前の管理会社と値上げ前金額にて管理委託契約を新たな管理会社と締結したとしても、質の低下が懸念される所でしょう。
また、管理会社変更をしたものの、前の管理会社の値上げ提示価格と同様の金額になったにも関わらず、管理の質が低下していたという事象も考えられます。
「前の管理会社の値上げに応じておけばよかった」
そのようなことにならないように、管理費に対して管理の質が変更前同様か、それ以上の水準で担保できるものであるかは、慎重にみていく必要があります。
そのためには、相見積もりを取得することや、管理会社の評判を聴取したり実際に管理しているマンションの管理状況を確認しに行くことも大切です。
管理組合や理事会として、検討期間を十分に設けて、結論を出していった方がいいでしょう。

管理業務のDX化
管理の質の低下をカバーする手段となり得るものとして、管理業務のDX化対応があります。
必ずしも管理員さんに通って貰う必要はなく、必要な時にタブレットやモニターを通じてQ&A対応をしていくものです。
また、清掃も定期的に担当マンションを巡回する清掃員さんに貰うことにより、管理の質を維持していく方法として考えられます。
半ば自主管理に近い形になりますが、管理委託費低減策とともに、管理員さんや清掃員さんの不足に対応する手段として、今後小〜中規模マンションを中心に導入がますます検討されるでしょう。
まとめ
管理組合と管理会社の間で起きていることとして、それぞれの現状を確認しつつ、今後想定されることを確認しました。
対処方法でも記載しましたが、「マンションは管理を買う」という点は大原則であり、住民のためにも質の低下は避けなければなりません。
さらに、一概に管理会社変更が良い、悪いということではなく、マンション管理の質の維持向上を念頭に、慎重に考えていく必要があります。
今後の管理会社に対する管理組合の検討事項として、参考にしていただければ幸いです。