大規模修繕工事を初めて行う管理組合が知っておきたいこと!
新築当時はピカピカのマンションでも、5年、10年と年数が経つと、汚れや経年劣化が目立ってきます。
そして10年を過ぎる頃には管理会社より大規模修繕工事の提案がなされ、管理組合で大規模修繕工事が議題になりはじめるのが一般的です。
でも、大規模修繕工事はどんな工事でしょうか?どのようにして決めるのでしょうか?
そこで、今回、大規模修繕委員長・理事長を経験して、初めての大規模修繕工事を行う管理組合が知っておきたい4つのことをまとめてみました。
管理組合の理事、特に理事長、修繕委員会の委員や委員長の方々にお読みいただければ幸いです。
大規模修繕工事とは?
そもそも大規模修繕工事とはどのような工事でしょうか?
ご存知のない方が、意外と多いのですが、大規模修繕工事という、決まった工事があるわけではありません。
ちょっと難しい言葉ですが、建築基準法で、「大規模な修繕とは、建物の主要構造部の1種以上について行う過半数の修繕」と定められています。
この建物の主要構造部とは、壁、柱、床、屋根、などです。
ですから、大規模修繕工事とは、このようにマンションの建物の壁、柱、床、屋根などを半分以上修繕する工事のことになります。
初めての大規模修繕工事では、もっとも劣化しやすい、外壁のタイル面補修工事と屋上防水工事が含まれることが多いです。
まず修繕積立金残高の確認を!
大規模修繕工事は、大掛かりな工事となりますので、当然、お金も時間もかかります。
そのために、修繕積立金を毎月積立てていき、予め定められた長期修繕計画に従って大規模修繕工事を行うのが一般的です。
そこで、大規模修繕工事を行うことを考え始めたら、まず、はじめに、十分な修繕積立金残額があることを確認することが大切です。
一部の組合員によって、修繕積立金の未納が続いている場合には特に注意です。
修繕積立金が不足して、金融機関からの融資が必須となる場合や、不足額が多額になると、大規模修繕工事を延期せざるを得ない場合もあるからです。
管理組合は、修繕積立金の未納がないように、日頃から注意することが大切です。
大規模修繕工事の施工会社の候補の選び方
大規模修繕工事の資金の準備が整ったら、次は工事を行う施工会社の候補を選びましょう。
日本の都市部にはマンションが極めて多く建てられていますので、マンションの修繕工事は特殊な工事ではありません。大規模修繕工事を行える会社は多数あります。
住民の方の関係者や知り合いをはじめ、新聞や雑誌、インターネットなどを駆使して、施工会社の候補を探しましょう。
施工会社の候補を選ぶ際に
マンションの大規模修繕工事の実績はもちろん大事ですが、管理会社から提示されるような条件は特定の施工会社しかクリアできないようなものになっていることもあります。
そのため条件にこだわらず、4社から6社ぐらいの候補を幅広く選定するのがよいでしょう。そのほうが比較する上でも各社のメリット、デメリットが把握しやすくなります。
また、工事終了後、5年、10年間はアフターサービス保証がされることが一般的ですが、その際に保証する施工会社自体が存在していないと、保証の意味はほとんどありません。そこで、施工会社の社歴や財務体質の確認、大規模修繕瑕疵保険に加入するようにしましょう。
なお、工事実績や職員数などの会社の規模、財務状況の概略は、国土交通省が、建築業を行う会社に、毎年通知している「経営規模等評価結果通知書、総合評定値通知書」で確認ができます。
施工会社の候補にはこの通知書の写しを出していただき比較してもよいでしょう。
施工会社の決め方
施工会社の候補が出揃ったら、いよいよ、組合の総会で普通または特別決議をして、施工会社1社を選ぶことになります。
まずは現地調査を
まず、各候補には、マンションの現地調査をしてもらって、見積もりを提出してもらいます。見積もりは、同じ条件で作成すると比較がしやすいので、各候補の現地調査は、同じ日か間を開けずに行うことが望ましいでしょう。
現地調査が終了してから、見積もりができるまでは、1から2ヶ月ぐらいの時間がかかるのが通常です。
施工会社の選考について
建築業に精通した人が多数住んでいるような特別な事情がない限りは、選考は二段階以上に分けることが無難です。
工事の見積もりは細かく、だいたい数十ページにも及ぶのが一般的ですから、建設業に詳しい人でなければ、読み解くのが難しいからです。
そこで、見積もりを比較することで、工事の概略や金額などの相場を掴み、一次選考として、候補の会社を2,3社に絞ることをおすすめします。
全体説明会を開催する
一次選考を通過した候補には、全住民を対象にした説明会を設けて、工期、工事の進め方、現場管理体制、工事期間の住民の注意事項などを説明してもらって、全住民の工事への理解と強力を求めましょう。
工事期間中には、マンションの周囲に足場が組まれ、メッシュシートで建物全体が囲まれたり、ベランダに私物を置かないようにするなど、住民が不便に感じることが多くなるからです。説明会に参加できない組合員の方のために、説明書を配布したり、掲示板に貼り出しておくと、住民の意見がまとまり安いでしょう。
全住民への説明会が終わったら、住民にアンケートをとって、組合の総会を開く前に、施工会社を内定し、総会の議案にします。1回の説明会で意見がまとまらなければ、候補に質問をしたり、さらに候補を絞って再度の説明会を行うことも考えられます。
しかし、選考に時間がかかると、候補の会社から辞退されることもありますので、総会の日程を予め知らせておく配慮も大切でしょう。
施工会社を決定する
施工会社の決定は総会で行わなければいけません。そして総会開催には、委任状、議決権行使書含んで区分所有者の50%以上の参加が必要です。
つまり、50戸のマンションであれば25戸の参加が必要ということです。大規模修繕の施工会社を決定するためには事前に委任状や議決権行使書を集めておくことが必要です。
管理組合の標準規約では、計画修繕工事は、普通決議で議決するとされており、普通決議であれば、参加者の過半数の賛成、上記の例で言えば13戸以上の賛成で承認となります。
大規模修繕を自分たちで進める意義
大規模修繕は手間がかかって大変、面倒くさい、確かにその通りだと思います。けれど苦労をしてでも自分たちの手で大規模修繕を進めるべきなのは、修繕積立金のためです。
大規模修繕は何千万円と掛かる工事です。そして、大規模修繕は必要以上に割高になっており、大いに削減できる余地があるのです。
割高な工事費のまま大規模修繕を進めてしまうと、修繕積立金の不足を招き、そして修繕積立金の値上げせざるを得なくなり、結果、暮らしにいくマンション、住みにくいマンションになってしまいます。
前述の通り、大規模修繕工事は何千万円と掛かる工事です。それを任せきりにせず、自分たちで取り組むことが大切であると切に思います。